「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画素案」情報提供は十分なされていたのか

2012~2014年を実施期間とする「かながわ 高齢者保健福祉計画」素案について、20日、1ヶ月間の意見募集が終了しました。また、横浜市の「第5期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画素案」に対する意見募集もいよいよ明日が締切日となっています。
この間、次期計画素案をめぐってミニフォーラムも重ねてきましたが、素案をご存じない方も含め、「意見を求められても…」といった声も多く、あらためて、利用者の選択と契約に基づく制度とされている介護保険制度の複雑さ、当事者との距離感を感じています。県の計画は、各市町村が策定する第5期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画を支援するものであり、国が示した指針の範囲で理念的な表現に留まることも致し方ないのですが、各市町村の計画素案についても明らかに情報が不足しています。
本来、財政状況も含めた現行計画の実施状況や課題を明らかにした上で、これからどういう事業を行うのか、そのために市民にどれだけ負担を求めるのかと言った情報が必要です。しかし、市町村の素案は様々でした。例えば、横浜市の素案は14ページ、茅ヶ崎市は199ページの冊子で、素案の掲載内容にはかなり違いがあります。中には、第4期の事業の実績や評価について、事業別に数値も示し掲載している市や、素案策定に先駆けて実施された高齢者実態調査の結果をデータとともに掲載している市、また、東日本大震災を経て災害時の要援護者対策に言及している市もあります。
財政状況を明らかにしないまま、マックスとなるであろう保険料基準月額案を提示している横浜方式が問題となりましたが、これを批判し基準額自体を提示していない市もありました。パブリックコメントの実施期間も2週間から2ヶ月と様々ですし、素案を冊子化しないインターネット上での公表のみおこなっている市もありました。
計画にそって事業を進めるためには福祉や介護の担い手が必要なのですが、介護職の処遇改善という課題は未だ着地していません。社会保障審議会介護給付費分科会の答申が出される予定ですが、介護報酬については1.2%のプラス改定(在宅1.0%、施設0.2%)とする厚生労働省案が公表されています。
介護職員処遇改善交付金分により報酬が2%分アップするとされていたことに照らすと、1.2%のプラス改定は実質的にはマイナス改定となるのではないかと思われます。大幅な保険料アップも見込まれる次期3か年の事業は、介護保険制度の大きな岐路となるものです。
政令によって定められる制度の詳細は新年度ギリギリにならなければ解らない中でパブリックコメントを実施する矛盾はあるにせよ、寄せられた意見をもとにさらに検討を進めて行く事はもちろんのこと、3年に一度と言わず市民の意見の聴取を行いながらしっかりと計画の進行をチェックすることが必要です。