1998年に特定非営利活動促進法が成立して以来、県内でも多くのNPO法人が設立されてきました。福祉、教育・文化、環境、まちづくり、海外支援など、社会の様々な課題に寄り添い課題解決のために活動するNPOの重要性は広く認識されているところです。
一方、NPOの構造的な課題として財政基盤の脆弱さがあげられ、補助金や受託事業収入等に依存した組織運営に陥りがちなNPOの実態も散見されます。本県においても、かながわボランタリー活動推進基金21協働事業を始めとして、行政とNPOの協働の施策が推進されています。事業を通じ制度と制度のはざまにある課題を捉ることや、優れた実践に学び制度化を進める姿勢は必要ですが、同時に、非営利・市民セクターとしての主体性や独自性を失いかねない危険性をもはらんでいることも留意されるべきです。
NPOが市民と向き合い、活動の意義を伝え解決すべき新たな社会的課題を共有することやその活動を行政ではなく市民が評価する双方向の取組みこそが市民社会の強化につながるものと考えます。
寄附金税額控除の対象となるNPO法人の指定に係る新たな条例を制定することは、公的支援から市民の寄附による直接的な支援へと転換を図る起点であり、市民セクターが自立性を保持しつつエンパワーメントできるしくみの一つとして期待されます。
本条例により、県と市町村がともに、対象となるNPO法人を指定できる環境が整備されますが、NPO法人への寄附が一層促進されるよう、県内市町村と連携した取組みが求められます。
本条例の施行規則、および、審査基準については、パブリックコメントを経て決定されるとのことですが、現時点で示された、公益要件や運営要件案として、ナショナルスタンダードとは異なった視点で、地域における法人の活動の意義を評価する独自の基準や指標を設けた事や、NPO法人側からの積極な情報公開を促す制度設計がなされていることについては、一定の評価をするところです。
しかしながら、これら公益要件の審査・判断基準については、あくまでも審査要領に定められるものであり、その改廃については、今後、議会の関与の及ばない所であります。
あらたなしくみづくりに向け、「NPO法人に対する寄附促進の仕組みづくりに関する検討委員会」においても十分な議論がなされてきたと承知していますが、これまでの議論、検討の経過を尊重し、新たな制度が、公開性・透明性を持って、また、一層の住民の共感と信頼を得て運用されるよう努めていただきたいことを申し上げ討論を終わります。