子ども・子育て新システムの基本制度案要綱を検証

子育て・介護の社会化のために求められる「社会の合意」

政府の子ども・子育て新システム検討会議から「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」が公表されました。新システム案では、政府の推進体制・財源を一元化し、子ども・子育て包括 交付金(仮称)を交付することや、市町村が、現金給付と現物(サービス)給付を自由度を持って組み合わせサービスを提供していくことなどが謳われてます。

新システムに位置づけられたサービスとして、幼稚園・保育所の一体化による「こども園」の取組みもクローズアップされています。「子ども家庭省」を創設し、省庁間の垣根を取り払うとしていますが、まず、「幼保一元化」がなぜ必要なのかを十分に説明し、良質な生育環境を保障し、異なる事業目的、基準、補助金の一体化に向けたより具体的な指針を早い時期に提示すべきです。
一方、親の様々な就労状況にも応じることができる公的保育サービスを確実に保障するため、客観的な基準に基づく保育の必要性を認定していくことや、小規模保育サービスや短時間利用者向け保育サービス、広域保育サービスなど多様な保育サービスの提供にも言及されており、この点については、今後の取組みに注目します。

しかし、地方主権改革の議論でも明らかになったように、現場にはナショナルミニマムの維持を求める声が根強い事も事実です。今回、市町村の責務として、必要な子どもにサービス・給付を保障することや、質の確保されたサービスの提供なども挙げられていますが、そのために一体どの程度の財源を必要とするのか、その財源をどのように確保するかといったことについては、明確に述べられていません。国や地方だけでなく事業主・個人といった社会全体で費用を負担するというイメージは示されていますが、経済界からはすでに企業負担の拡大には応じられないという見解も出されています。

指定制や利用者と事業者の直接契約制度の導入についても、質の確保という視点から、利用者の選択に委ねるだけの事業者の参入が期待できるのかも十分見極める必要があります。一足先に措置から選択へと制度転換を図った介護保険制度においては、介護人材の慢性的な不足が続いており、特に、06年度の制度改正により給付抑制が進み訪問介護事業の閉鎖や撤退も起きています。ケアマネジャーからも、在宅生活を維持する条件として「家族力、経済力」があげられるという状況です。利用者の負担増のリスクにも配慮しながら介護の社会化を進めるためには、財源確保=パイを拡げることを考えなければならないと思います。
子育てや介護の社会化のためには、まず、子育て介護を社会全体で支えるという社会の合意を作る努力が不可欠です。

横浜市としても、これまで取り組んで来た保育・子育て支援施策の事業評価や監査のあり方の検証、福祉オンブズマン制度の充実など、質の高いサービスを安定的に提供するためのより具体的なしくみもシミュレーションを行って行く必要があります。