昨年秋、市内の産婦人科病院での無資格助産事件は記憶に新しいところですが、年間分娩数が3000件もあって助産師が6人という産婦人科病院の実態には驚きの声が上がりました。
産科医・産院不足は深刻で、県の調査によると、この3年間で県内の分娩件数は約5700件ほど減少する見込みだといいます。この間、地域を歩いてみても、閉院した産科があり、また分娩の予約が取れないという声もたくさん聞きました。 先の事件をきっかけに、日本の産科医療の問題点ばかりがクローズアップされていましたが、周産期死亡率は日本が一番低いし妊産婦死亡率も世界でトップレベルの低さです。その影で産科医療に従事している方たちは、多くの自己犠牲も強いられています。友人の産科医もひと月に8回は宿直とこぼしていましたが、世界でトップクラスの周産期医療実績を出しているのも事実。ところが、産婦人科の訴訟率は非常に高く、3人に1人の医師が訴訟をかかえている割合いになるそうです。「患者のための医療」よりも「訴えられないための医療」に変わり、そのうちやめていく。裁判の増加によって医療崩壊の危機に瀕しているという事実も見据えなければならないのではないでしょうか。政府も「無過失補償制度」の検討を進めているようです。不幸にして赤ちゃんが障害を負ってしまった場合に、速やかに経済的支援を与える制度で、まず支援を与えた上で、医療側に責任が有ったのか否かは別の第三者機関が検討することで、裁判という最悪の事態を避けようというものです。
ある産科医は、「マスコミが医者の不始末を尻ぬぐいするために税金を使うのか」とか言い出す可能性は充分と、皮肉交じりにおっしゃいました。でも、医者の産婦人科離れの大きな原因を指摘する現場の声、無視できません。