産業を育成するため?「容リ法」

NET政治スクール環境講座報告

 容器包装リサイクル法の改正と自治体の役割について、熊本一規さん(明治学院大学教授)のお話を伺いました。 容器包装リサイクル法は、何を目指したのか…。現状の容器包装リサイクル法は、「税金を使ってリサイクル産業を育成するもの」という熊本さんの問題提起も、あながち間違いではないと私は思っています。では、容器包装リサイクルのよいところは何なのでしょうか。熊本さんは、「この法律によってEPR15%実現した。EPRの方向性が示せたという意義がある」とお話くださいました。確かに、分別・リサイクルをしていないとEPRを問えないでしょう。そこで、大量廃棄から大量リサイクルへと自治体の政策転換が進んできました。
しかし、容器包装リサイクル法に基づく分別収集拡大、特に、プラスティックのリサイクルは莫大な費用を生じさせています。その経験により、容器包装リサイクル法の矛盾がわかり、市町村が事業者の責任に目をむけることにつながれば、それも一つの成果です。
自治体の財政難を背景に、ごみの有料化も進んでいます。経団連も「ごみ有料化」を叫んでいます。これは、まさに、EPRに向わせたくないという事業者の意向の表れです。ごみの有料化は、本来は自治体が決めればいいはずです。
法改正の議論を通しても、この法律が果たして、循環型社会形成推進基本法に謳われた循環資源の循環的な利用及び処分の基本原則にのっとったものなのだろうかが問われています。
改正法案では、「発生抑制」(Reduce)が「排出抑制」という言葉に置き変えられ、再使用(Reuse)の文言も抜け落ちてしまいました。
法律による規制が期待できないのなら、自治体が知恵を出し、EPRとリンクしてEPRの徹底のための分別を実践すべきです。それは、決して、分別品目数を拡大する事ではないと言うのが熊本さんの意見です。
ドイツでは市民の分別は2分別、あとは、事業者が分別の責任を持ちます。そして、経費は価格にのせられます。そのことによって、経費の一部は、消費者が負担する事になります。
具体的には、自治体レベルで適正処理困難物の指定を行うという手法が考えられるそうです。東京都では、すでに、15品目が、適正処理困難物に指定されており、その15品目については、事業者が処理費用を負担する責任を負う事になるのだそうです。
生産者が負担することを通じて、消費者負担することで、「公」が行う税金によるごみ処理からの脱却を目ざすべきですね。
(EPR:「生産者が生産物に対して負う責任」使用後の製品回収や再資源化の費用を、製品 コストとして生産者に負担させる考え方)