介護保険制度を分権しなきゃだめ

予算関連質問報告 その2

近頃、介護保険サービス以外の独自サービスの「生活支援サービス」(ヘルパー派遣)の案内をよく目にします。
時間あたりのサービス料は 1200円〜2000円といった幅があり、まちまちですが、様子をうかがっている事業者もあるようです。昨年、特別養護老人ホームやデイサービスの食事加算が廃止になった際にも、利用者負担の設定をめぐっても、同じようなこと起きました。小規模多機能事業に参入するか否か、パワリハを導入するかどうかなどなど…。現場の混乱は続きました。現在、ようやく国から改正介護保険法の詳細が示されて、横浜市でも、次期介護保険事業計画の策定作が急ピッチで進められています。地域包括支援センターに配置しなければいけない主任ケアマネの研修もまもなく終了予定。
とにかく、国と一部の専門家が主導する形で進められて来た介護保険法改正は、自治体にとっては大変なストレスだったと思います。「地域包括と言われても、実態がイメージできないんです。」と、険制度の改正に振り回された職員の方々のため息が聞かれました。しかし、質疑の中では、市長は、「制度改正はつつがなく進んだ」と答弁。
本当は、横浜市が、保険料を決められるし、必要なサービスを地域の実情によって提供していくことも可能とされている介護保険制度です。でも、現状は、政省令が細部まで規定して、自治体や福祉現場での創意工夫の余地を狭めていることが問題です。
介護保険事業は、民間事業者の自由参入と、利用者・家族のサービス選択によって、サービスの質の向上がはかられてきました。「官から民」への流れの中で成長してきた制度です。しかし、改正によって、自治体コントロールが強まる事も予想されます。
2006年度から始まる地域密着型サービス事業者の指定は、市の整備計画にそって横浜市が行います。民間の自由参入とは異なり、事業者選定の妥当性等について、市が判断することになります。
また、地域密着型サービスのひとつ「小規模多機能型居宅介護」の利用者は、一部を除き他の事業者を利用できなくなります。これは、利用者の選択によるサービス利用を原則とする護保険制度の趣旨に沿いません。
具体的には、訪問看護、訪問リハビリのような医療系サービスをのぞいて、ケアマネジャーも含め、デイサービス、訪問介護、ショートステイといった一つ一つのサービスの選択肢はなくなり、利用者と事業所を固定するしくみになります。
今回の介護保険制度の改正に見られたような、給付の抑制、財政論からのみの制度設計は、制度の可能性を縮小させてしまいます。高齢化が進めば、給付の拡大は避けられません。これからも、ある程度所得のある方は、独自サービスを使い、必要な支援を自ら選択できると思います。問題はそれ以外の方たちです。もちろん低所得者への対策は必要ですが、介護保険制度は使える制度という信頼を高め、保険料負担が増すことに対しても、市民の合意を作っていくという努力をするべきではないでしょうか。
これは、政治や行政への信頼を高めることに他ならないと思います。