「3歳の壁」をどう突破するか〜小規模保育事業をめぐって〜
たて続けに小規模保育事業について取り上げる記事を目にしました。
・日経新聞 (2016/3/1)『広がる小規模保育 新たな「3歳の壁」に懸念も』
・朝日新聞 (2016/2/26)『小規模保育所「3歳の壁」』
・神奈川新聞 (2016/2/29)『3歳児以降の受け皿が難題 小規模認可保育所の全国調査』
いずれも小規模保育事業(0歳~2歳児を対象とする定員6人~19人までの小規模で家庭的な保育)における「3歳の壁」問題にフォーカスした記事。NPO法人全国小規模保育協議会が独自に実施した調査でも、経営上の課題として「3歳児以降の受け皿としての連携園」をあげた事業者が50%にものぼった事が報告されています。
児童福祉法第24条第2項では「市町村には必要な保育を確保する義務がある」とうたっています。もちろん小規模保育事業もその対象です。だとすれば、市町村は連携施設の確保にも主体的にかかわっていかなければならないはず。
連携施設の設定が困難である場合には、小規模保育事業からの求めに応じて市町村が調整を行うことになっています。にも関わらず「3歳の壁」問題が起きている要因について、協議会の駒崎弘樹理事長は「近隣の認可保育所が連携園について十分な認識を持っていないと同時に、何より自治体が連携園の斡旋などに積極的ではないことが原因」と指摘されています。小規模保育事業所でも、特例給付を受けて、3歳児以降の子どもを預かることが可能(定員の120%までは減算なし)ですが、そのことを事業者も自治体も知らない状況もあると言います。
連携園は、卒園後の受け皿の設定のみならず、保育内容の支援、 代替保育の提供のためにも必要です。児童福祉法第24条第2項について、自治体がどう解釈しているのか問わなければなりません。
県内では、横浜市や相模原市が連携施設への独自助成を行っています。相模原市については、今年度の小規模保育事業所卒園後の受け入れは、ほぼ確保できているとのこと。記事(日経新聞)の中には、新たに3~5歳児専用の保育所を整備する松戸市の取組みも紹介されていました。
小規模保育は、子どもの人数に対する保育者の配置が手厚く、待機児童の多い場所に多額のコストをかけずに短期間で開設できるなど、新制度の「目玉」ともいえる施策です。「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログエントリーが注目され、あらためて待機児童問題がクローズアップされるなか、各紙が小規模保育事業、「3歳の壁」に着目したのも、この課題をクリアできればかなり可能性のある施策だという評価があるのではないかと思います。
「3歳の壁」をどう突破するか…。誰が読んでも「連携園の確保義務は自治体にある」ということが理解できるように児童福祉法を改正するのが早道ではないかと思いますが。自治体への促しを続けながら、なお知恵を絞りたい。