消費増税で増収、その「使い道」知りたいなあ
地方自治総合研究所の菅原敏夫さんを迎えて、2016年度自治体予算についての学習会を開催しました。菅原さんが、16年度の予算の争点としてあげられたのは社会保障予算。菅原さんは、その理由を以下のように話されました。
「社会保障・税の一体改革により消費税の増収分は、すべて社会保障経費に充てると法律上明記されており総務省も通知により促している。2016年度は消費税の増収分が期首から「平年度化される」=「フルに税収が入る」ことになる。本当に社会保障に充てられているのか、検証する必要がある」と。
私は昨年、県の予算委員会で消費税の増収分の配分について尋ねたのですが、「国の地方財政計画に示された内訳と割合に準じて財源を充当している」との答弁でした。答弁者は財政課長でした。他の自治体でも事業を所管する部局は「わからない」と言い、財政担当が答える場合が多いそう。ついでに言えば、「おカネに色はないので…」という話も極めて頻繁に聞かれると言います。菅原さんは、「何に使ったかの証明は、政府・自治体の説明責任に任されている。領収書が発行されるわけでもない。実際何に使ったかはわからない。」と指摘されています。
神奈川県の2016年度当初予算案の概要には、「消費税率引き上げ分の活用」という参考ページ(56ページ)があります。新たに示された「科目別一覧」を見ると、子ども・子育て支援、医療・介護関係予算(社会福祉・社会保険・衛生費)の予算合計額3,951億9,900万円に対し、引き上げ分の消費税活用額は639億1,500万円(その他の一般財源は2,837億200万円)となっています。確かに消費税は一般財源ですし、社会保障費の財源として、消費税を大幅に上回る消費税以外の一般財源も投入されています。なので、消費税の増収分の使途なんか聞いてどうすんの、という雰囲気に包まれてしまいます。
もう一点、菅原さんが提言されたのが、「地域医療介護総合確保基金」の有効活用です。厚生労働省の 『平成28年度における「社会保障の充実(概要)』(平成28年度予算案(保険局関係)の主な事項より)でも、地域医療介護総合確保基金が地域医療・介護の充実の柱として位置付けられています。この基金から交付金が出されるのですが、交付にあたっては都道府県計画、市町村計画が必要とされています。(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律:4条、5条)現状は、都道府県の事業が多くなっており、菅原さんは「そもそも市町村が計画を策定していない状況がある。こうした交付金を活用し、総合事業の充実を図れるはず」と話されました。
多くの市民が「社会保障に使うから」と、消費税の引き上げに同意したのだと思います。2017年4月1日には、消費税が8%から10%(うち地方消費税2.2%)へ引き上げられます。2017年度からの社会保障の枠組みを考える意味からも、消費税が5%から8%へ引き上げられて社会保障がどのように充実したのかという検証は必要です。こういった視点からも予算審議に注目したいと思います。