昨日、可決した2010年度予算のうち水道事業会計予算については、各会派からさまざま意見が出され、付帯意見を伏して可決されたという経過があります。
問題となったのは、水道局が資本金1億円を出資し水道局OBを社員にした株式会社を設立し、浄水施設の維持管理や他事業者の人材育成などに新たなビジネスを展開するという事業です。水道局は、新会社によるビジネスを水道事業の安定的な経営に役立てるとしていますが、私は、以下の理由から反対しました。 まず、同様の事業を行なう事業者は多数あり、本来、競争入札によって事業者の選定をおこなうべきところ、この新会社の事業実績を積ませるために、来年度から4 年間は随意契約で委託するとしています。それでも、新会社が損益分岐点に達するまでには4年かかり、5年目にようやく約4700万円の利益が見込まれるという事業です。随意契約対象の鶴ヶ峰浄水場は、当初2009年度に停止する予定でしたが、この事案により2010年度まで運転を延ばすこととなりました。その運転管理費は約7800万円です。
東京では、第三セクターの東京水道サービスが、随意契約または1社入札により独占的に東京水道局の事業を受けているにも拘わらず、直接作業することはほとんどなく実際の作業は民間に下請けさせていたことが明らかになり、純民間企業が直接に局と契約できることを阻止していた事実が都議会でも問題となったという事例もあります。
また、海外展開についても、欧州系の大企業が市場を押さえている上、国内でもすでに40社が参加する「海外水循環システム協議会」がオールジャパン体制で調査・モデル事業に着手しており3年後にようやくひとり立ちできる新会社が参入できる見込みはあるのか、はなはだ疑問です。
付帯意見には、“経営悪化による財政支援は原則として行わないこと”という文言がありました。経営悪化の際に財政支援をしないことについては当然ですが、原則としてという文言は例外を認めることに他ならず、新たな財政支援をするような事態になることも懸念されます。
市民にとっては安心安全な水が供給されることが一番の願いであり、水道料金収入の減少や老朽化した配水管の取り換えに要する費用が財政赤字を生む要因であるなら、まず水道事業内容の精査を行うべきだと考えます。新たな投資によるリスクを今、市民に負わせることになる株式会社設立は認められません。