ハウジングファーストから始まる女性の回復支援

11月23~24日、神戸で、全国シェルターシンポジウム(主催:NPO法人全国シェルターネット)が開催されました。
今年7月に、お会いした正井禮子さん(認定NPO法人女性と子ども支援背センターウィメンズネット・こうべ代表理事)にお誘いいただいて、私も開催地神戸へ。
23日には、正井さんから、ウィメンズネット・こうべの歩みと共に、民間シェルターの実践報告として、2024年6月にオープンした六甲ウィメンズハウスが紹介されました。

六甲ウィメンズハウスは、コープこうべの旧女子寮を、40部屋、8タイプの居室にリフォームし、以下のような方たちを受け入れているそうです。自由度は一般賃貸住宅に近く、心のケアや生活支援、食糧支援、就労支援などの支援があることが特徴です。

<受け入れ対象>
・自立を希望する、小学生までの子どもがいるシングルマザー
・就労・自立を目指す18~20歳くらいまでの若年女性
・学ぶ意欲のある経済的困難を抱えた女性の学生、留学生
・資格取得意欲・就労意欲があり、自立を目指す単身女性

正井さんの報告を受けたパネルディスカッションでは、あらためて、日本の DV 被害者支援が初期段階の緊急時に「逃げる」支援に偏っており、継続性や包括性(心理、医療、福祉、生活、司法など)が足りないことや、住まいの支援の重要性、中長期的・生活支援の必要性等について提起されました。 

まず、 北仲千里 さん(全国女性シェルターネット共同代表) からは、グローバル・スタンダード として、国が女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンス行為を防止することや、調査、処罰および補償するために責任を負うことを明確した「イスタンブール条約」が紹介されました。また、自治体の公営住宅の中に、 DV シェルターや、高齢者障害者などの福祉住宅のフロアを混ぜる、あるいは、シェルターから出た後の中長期の住宅を確保し、被虐待の子どものケアセンターも併設するといった台湾の事例が共有されました。

続いて、葛西リサさん(追手門学院大学地域創造学部准教授)からは、死別母子世帯に比して、離別母子世帯の婚姻時からの転居率が極めて高いことや、DV被害当事者の多くが、逃避からの住宅移動を複数回にわたって重ねている状況、また、住宅は健康にも学力にも強烈な影響を与える重要な要素であることなど報告されました。

中島明子さん(和洋女子大学名誉教授・NPO法人墨田さわやかネット理事長)は、住教育の重要性や、「住宅は人権」を掲げる行政・首長・議員の実現や、これを押し上げる住宅運動や市民運動の重要性にも言及されました。
これらのお話から、多様なアクターが参加し、「住まい+ケア+就労+まちづくり」を繋ぐ仕組みをつくり、当事者を孤立させない住生活支援を展開する必要性とともに、私たち一人ひとりに関わり・つながる問題であることを再確認できました。

秋の行楽シーズン、宿泊場所の確保に大苦戦。新快速で三宮から西へ下る。懐かしい景色でもありました。