IRカジノは、日本が選択すべき成長戦略たりうるのか?
和歌山市では、11月6日よりIRの是非を問う住民投票を求める直接請求署名が行われていますが、29日時点で、すでに必要署名数の6200筆をクリアし10200筆に達しているとのこと。(12月5日まで)
IRの誘致を進めているのは和歌山県で、来年2月の県議会で区域整備計画が議決される予定ですが、設置自治体は和歌山市となることから、和歌山市議会の同意も必要なため、直接請求の結果次第では、今後のIR事業の展開に大きな影響を及ぼすと考えられています。
今春、和歌山県が、IR事業の優先事業者として選定したクレアベストは、投資会社でカジノ施設の経営実績はなく事業主体も不透明。今月19日に開催された県のIR対策特別委員会では、資本調達の資料や運営の詳細が明らかにされなかったため、25日から予定されていた公聴会やパブリックコメントの実施を延期することを決めています。
そもそも、和歌山県では、当初、事業者選定で1位となったサンシティに、マネーロンダリングや反社会的勢力との関係などの疑惑が浮上。サンシティの辞退を受けて仕切り直しの事業者選定でしたが、この状況を見れば、県の選定委委員会が機能してるのだろうか?と言う疑念も持ちます。
これが世界最高水準のMICE型IRなのか?
クレアベストといえば、鳥畑与一さん(静岡大学教授)の『クレアベストは、56社に投資総額15億32百万ドルで1社平均2700万ドル(約30億円)の投資を行う中小ファンドであり、様々な投資対象で判断できるように自らは特定の 事業(実業)を営まない。』と言う衝撃的なお話も思い出されます。
今年2月には、大阪IR実施方針も条件緩和されていますが、「展示面積として10 万m²以上の計画とする。」としながらも、『 なお、展示等施設の整備は段階的に行うことも可能とし、段階整備とする場合 は、IR施設の当初開業時には展示面積2 万m²以上とする。また、当初開業から10 年以内を目途に拡張計画を決定し、当初開業から 15 年以内を目途に展示面積を6万m²以上に拡張する』などと随分グレードダウンされています。
鳥畑先生の報告では、AGA(アメリカゲーミング協会)年次報告「State of State 2021」(5.20)で、商業カジノのLandscapeが変貌し、オンラインでのスポーツ賭博とカジノが急増、ゲームチェンジャーになるとの指摘も紹介されていました。当然ながら、オンライン化はMICEにも波及。対面とヴァーチャルを組合わせたハイブリッド化も進み、巨大な箱物施設であるMICEやカジノに集客して、対面型で収益を追求するビジネスモ デル=IRカジノの持続可能性が崩壊しつつあるのではないかとの指摘もありました。
こうなると、「カジノではなくIR」とばかりに、世界最高水準のIRが生み出す経済効果の大きさを持って、刑法の違法性を免罪する最大の理由とされて来た論理は既に破綻しているのではないでしょうか。
検証なくして未来はない
横浜への誘致を巡っても、「IRカジノは、日本が選択すべき成長戦略たりうるのか?」と言う視点から、何度も横浜市への提言を試みましたが、議論は全く噛み合わず、市長の交代まで2年にわたり事業は推進されてきました。
それはなぜなのか。もちろん、現在進行形の他都市へのIR誘致の動きへの懸念もあります。だからこそ、カジノ・IR事業に関する横浜市のこれまで全ての取り組みは、検証されるべきです。
11月25日、カジノを考える市民フォーラムは、山中市長あてIR事業に関する市のこれまでの取り組みを検証する第三者委員会の設置や、検証結果の公表などを求める要望書を提出しました。二週間後の回答も待って、新たなアクションを進めていきます。