「桜の樹の下」自主上映会&トークショー 「こんなふうに生きられるのなら…」
1月24日、川崎の市営団地で暮らす4人の高齢者の日常を描いたドキュメンタリー映画「桜の樹の下」の自主上映会(すすき野地域ケアプラザ、アートフォーラムあざみ野/映画を観る会主催)と、田中圭監督のトークショーが開催されました。
映画の舞台は川崎市営団地。350世帯の7割は高齢世帯。支える家族がいない人たちの日常が淡々と映し出されます。
川崎市内の団地に暮らした経験もあって、市営団地に通い続けた29歳の若い監督。「みかん食べる?」って話しかけてくる人がいたりして、不思議な空気が流れていて…。」そんな団地に住まう人たちと交流しながら「なんで自分はここに通うのか」と自問自答し、「ここがやっぱりふるさとだった」という答えを見つけたと話されました。団地では孤独死も起こる。その状況を報告し「皆さん気をつけて」と言う自治会長さん。「そういう風に日々が流れている。その日々を残したかった」という田中監督の思いが伝わる作品でした。
1966年、田園都市線溝の口〜長津田間が開通、田園都市にモダンで都会的な団地ブームが起こっていた頃、市営団地は地方から出て来た労働者の受け皿となっていました。当時川崎市の人口は10年間で40万人増加したと言います。そんな団地は、今、故郷を離れた高齢者の受け皿となっています。
田中監督とともにトークショーに登壇された北原まどかさん(NPO法人森ノオト)は、横浜市における核家族の割合は60,2% 単身世帯は33,8% 、ひとり親世帯8.1%とデータを示し、急速に進む高齢社会の実態に迫ります。すすき野1、2丁目、あざみ野3丁目、青葉台1丁目、奈良町と、大規模団地のある地域の平均年齢は区の平均年齢より5ポイント高くなっているというコミュニティーの課題も共有しました。
田中監督からは、「こんなふうに生きられるのなら。ちょっと安心した」という若者たちの声も紹介されました。何度か作品に触れて、ようやく私も「一人で死んでいくことは必ずしも悲しいことではない」というメッセージに気付かされました。切なくもあるけど「生きていくんだ」というエネルギーを感じられたという方が正確かも知れません。何だか、ふるさとがあるから、迷い悩んでいる私の方が、ややこしいくらいに思えてしまいます。
この日は、20歳から91歳まで約100人で鑑賞。観賞後のおしゃべりも大事な時間。始まったばかりの映画を観る会の活動ですが、参加の機会を得て感謝です。文化を通じて,考えて、おしゃべりし、つながる試み、面白くなりそうです。ここで、北原さんが言われていた、世代のバトンをどう渡していくのかという問題意識もクロスしていきたい。
「桜の樹の下」公式サイト