いよいよ始まる「フードバンクかながわ」の取り組み
一般社団法人フードバンクかながわ設立記念フォーラムに参加しました。2016年より準備を進めいよいよスタートとなるフードバンクかながわには、12の団体(協同組合、労働福祉団体、市民福祉団体)が参加しています。代表理事の當具伸一さんは、設立の経緯を振り返り「生協や農協は、生産や流通機能を持ち、また、それぞれの団体が人と人が協同し相互扶助を図る体制を持っている、このようなインフラと体制をもつ団体が個人、団体、企業、行政と連携し貧困問題、食品ロスの問題の解決の一旦を担うことができるのではないかと考えたのが出発点」と話されました。
フォーラムでは、地域で市民同士の相互扶助の社会づくりを進めておられる団体の皆さんの報告や、行政として生活困窮者支援を通じた地域づくりに取り組む事例報告もありました。いずれの報告でも、食をツールに困りごとを可視化していく視点や、様々な社会資源につなげ支援するソーシャルワークの実践を伺えました。とりわけ先駆者としてフードバンク事業を展開し、フードバンクかながわの設立にも協力をしてこられた「認定NPO法人フードバンクふじのくに」鈴木和樹さんの報告には多くの示唆がありました。ふじのくには、静岡県内で労働団体や生協、市民団体がコンソーシアムを組んで、全自治体と連携し食糧支援を行なっています。鈴木さんの「あらゆる人が関わることで「助けて」に応えるとことができる。フードバンクはあくまでも黒子の存在」という発言は大変印象的でした。
フードバンク事業が入り口となり、あるいは出口になりながら、生活困窮者自立支援事業と重なり・つながる状況も見えました。自治体職員は、この事業について『相談から自立に向けて「なんとかしたい、なんとかならないか」の気持ちを重ね、新しい支援の道を開いて行くイメージ』と評しました。制度の隙間にある人への支援、対象が明確でない中での支援の難しさもあるでしょう。
地域で展開される「支え合いの仕組み」や「市民同士の助け合い」はもちろん大事ですし、これからも地域でそうした活動に参加したいと思います。一方で、具体的な給付がほとんどない生活困窮者自立支援制度を考えるときに、「我が事・丸ごと」の旗を振るだけではなく、同時に社会保障制度としてのセーフティネットにほころびをつくらない、公助を後退させない行政や政治の役割も強く意識したいと思いました。学び多いフォーラムでした。