「共生保障」生活困窮者支援とまちづくり

施行後3年をめど見直されることになっている生活困窮者自立支援制度について、9月11日、宮本太郎さん(中央大学教授)を迎えた学習会が開催されました。今年度、神奈川ネットでは、生活困窮者自立支援制度のうち、就労準備支援事業を中心にワーカーズ・コレクティブ協会とも共同し調査研究を進めていることもあり、現場のワーカーもたくさん参加される学習会となりました。

宮本さんは、人生100年の時代の到来を喜べないのはなぜかという問いとともに、その背景にある世代を超えて広がる孤立や困窮の実態を捉え、困難を抱えた人々に参加の条件を広げる新しい生活保障の必要性を提起されました。
まず、紹介されたのは、2007年生まれの子どもの半数が107歳まで、2014年生まれの半数は109歳まで生きるというシミュレーションデータ。(カリフォルニア大学バークレイ校・マックスプランクインスティチュートデータベース)
一方で、厚生年金があっても、高齢単身男性の28%が年収150万円以下(女性は45%)、高齢単身女性の半数が生活保護というデータも。困窮問題だけではなく、「会話頻度が2週間に1回以下が16,7%」というような「孤立問題」も深刻です。(2012年内閣府調査)
現役世代だって、学費の負担や、雇用不安定化などの困難を抱え、それが非婚・単身化や出生率の低下という現象に繋がるというような「そもそも」の問題もあります。M字カーブが改善されたと言っても未婚率の上昇がM字の底を引き上げていたり、子供の貧困率が改善されたと言っても所得中央値が下がり続けているというような状況です。
その上で、地域に必要な本当の包摂型社会「共生保障」の形として、生活クラブ千葉の「風の村」や、シェア金沢(社会福祉法人佛子園)、ナガヤタワー(株式会社THEM・鹿児島市)など、支援付き就労や地域型居住の実践モデルを紹介いただきました。
もちろん、「そううまくはいかない」のも常。私は、むしろ「こんな頑張ったのに上手くいかない事例、ワーストプラクティスが一番勉強になる」という言葉に共感を覚えました。
NPOや社会的企業がどんなに頑張っても、「はっきりした困難が基準通り確認された時に保護してあげましょう」という行政の仕組みや、縦割りの制度が見直されない限り準市場だってその力を発揮しきれないだろうと思います。何よりも「市民は負担する用意がある」にもかかわらず、政治や行政への信頼がないことは本当に不幸なこと。
宮本さんは、新しい縁づくりがタテ・ヨコの信頼をつくると言います。
「花下連歌」の集まりから「フーテンの寅さん」や「釣りバカ日誌」まで、日本にはもともと地縁や血縁の外に自由な縁をつむぐ伝統があったじゃないかと。(確かに。)
宮本さんのお話は、正直言えば目新しいことではありませんでしたが、ネットワークする運動が重要であることは間違いなく、私たちにも問われていること。多様な「縁」を紡いでいこう。