デジタル化、スマホ必携が進む社会とDV・性暴力
11月24日、全国シェルターシンポジウム2日目は、デジタル化、スマホ必携が進む社会とDV・性暴力をテーマにした分科会で、さまざまな支援者の声を聴きました。
分科会のコーディネーターの北仲千里さん(全国女性シェルターネット共同代表)の問題提起は、
「スマホやインターネットが生活に浸透している今、それを全部否定するわけにはいかない。プラス面を活用しつつ、マイナス面に対しては意識的、積極的な対策をとっていくことが重要。一方で、多様な被害者に対応することを謳っている女性支援法の趣旨を踏まえると、DVシェルター内での安全と同時に、多様性や行動の自由の問題について、公的機関は対応しないわけにはいかない」といった内容です。
マイナス面とは、スマホ等デジタルツールによる監視、メール、SNSやGPSによるストーキング、性的画像撮影、リベンジポルノなどによるDV被害。特に、シェルター等の支援現場においては、居場所を突き止められる、加害者と連絡が取れると支配・コントロールが続いてしまう、SNSなどに投稿されるとシェルター情報や支援者情報の秘匿に影響するなどの影響が危惧されます。
DVシェルターでの携帯禁止や外出禁止などについては、女性支援法(2024年4月施行)よりも前に、厚労省が通知も出していますが、あまり大きな変化はないそうです。また、シェルターネットでの支援関係者間でも、携帯電話使用について、「問題ない」という声と「そんなことはない」という声の両方があり、リアリティも様々であるとのこと。
実際、参加者の皆さんの見解や取り組みもさまざまでした。
携帯禁止、外出禁止とされている方々からは、利用者のスマホ使用によって居場所が特定され施設移転を余儀なくされ相当の費用も発生した、自宅に残したパソコンからスマホのネットショッピング情報を把握、居場所が特定されたなどの事例が報告されました。
一方で、携帯使用も外出も基本自由としている方々からは、利用者に控えのスホを貸与、フリーWi-Fiを設置する、GPS機能をオフにしてもらう、パソコンは持ち込んでもらう、各種アカウントやパスワードは変更してもらうといった対策を講じている、特に問題は起こっていないといった報告がありました。
テクノロジーの変化は激しく「大丈夫」を超えてくる
両者のお話から、最初のデジタル処理が難しいことはよくわかります。
デジタル性暴力や性的搾取による被害相談に対応しているNPO法人ぱっぷすの内田絵梨さんによると、現在、ぱっぷすに寄せられているデジタル性暴力に関する新規相談は、毎月250件にのぼるそうです。
内田さんは、「さまざまなリスクの潜むアプリが出現し、被害を防げない時代である。もっと追いつけなくなってくる。だからこそ、スマホがあるという前提で福祉的にできることを考えたい。」と言います。例えば、生命(いのち)の安全教育やシェルターの中で、インターネットリテラシーを学んだり、目分とや他者との関わり·バウンダリーを学ぶプログラム等が考えられます。
ここまでガチガチでなければならないのか?
「スマホの使用だけでなく、男の子もいっしょ、ペットも一緒に避難できることは不可能なのか?自分で考えて選択できることが重要。」これらは、二日間のシンポジウムの中で、何度か聞いた北仲さんの言葉。海外の取り組みの調査·研究を重ねてきた北仲さんの「対策はあるんじゃないのか」という想いが伝わってきます。
分科会のまとめとして、北仲さんは、まずケースのリスクアセスメントを丁寧に行うべきとし、その上で、危険度が高い緊急シェルターに入所する際には、「一旦、スマホのないシェルターに入ろうね」という対応を行う、でも、そうじゃないケースもあるだろうという考え方を示されました。
これを実現するためには、多様な受け皿が必要ですが、まだまだリソースが不足していることは否めません。シェルターネットは、国に対して、民間団体を重要な支援の担い手として正当に位置づけ、財政的な支援を行うことを求めています。
個別事情を勘案し尊重するためには、DV 加害者のリスク判定や被害の深刻度判定のしくみも必要となります。警察のストーカー危険度判定情報を、いかにソーシャルワークに活かしていくか、これも今後の検討課題として整理されました。
内田さんも、最後の最後に「ちょっといいですか!」とマイクを取られて…
締めの発言は、「アルミホイルに包まなくてよい方法を考えましょう!」と。
実は、つい先日、某自治体の会議でも、同様の話し合いがあったそう。そして、会議の終了間際に、支援者から「スマホは、電源切って、アルミホイルに包んで、持ちこんでもらいましょう」という一言があってんだとか。
あーほんとに、まず、何がどうキケンでだめなのかという整理が必要。色々と。