「こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業」始まる

いよいよ、横浜市でも「こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業」がスタートします。市内で13ヶ所、うち青葉区では2ヶ所実施されることになっています。

この試行的事業は、幼稚園や保育所などに通っていない0歳6か月〜3歳児を対象として、保護者の就労等の理由を問わず、月10時間まで幼稚園・保育所などを利用できるという制度。
全国で、理由を問わない預かりが利用できる、しかも1時間300円の利用料で!と言うふれ込みなんですが、自治体の動きはイマイチのようです。

まず、利用上限時間が月10時間の定期利用って、利用する方にとってはどうなんでしょうか。
ピッピで受け入れてきた一時預かりの定期利用の利用時間に比べると随分少なめの時間だなあという印象。自治体への委託金や事業者に交付される補助金は、基本的には子どもひとり1時間あたり850円。300円の利用料と合わせて1,150円にしかならないスキーム。(障害児を受 け入れる場合は子ども一人1時間あたり400円 を加算)
全国小規模保育協議会として、すでに国に改善を求めているところだけど、これでは事業所はやらないというか、やれないだろうと思います。
まずは、試行的事業を振り返り、次年度以降に向けて必要な見直しを行うという流れなのだと思いますが、一方で、誰でも通園の予約や利用状況管理、請求事務にかかる総合支援システムを今年度中にも構築するんだとか。

ちなみに、横浜市は、子どもひとり1時間あたり850円の助成に加えて、月額10万円の基本助成と上限年額25万円の研修・備品費を助成します。お隣り川崎市は、基本の補助金に加えて、1施設年額3,066,000円の賃借料を補助するそう。そんな川崎では45箇所で試行的事業が実施されるようです。
全国に目をやると、「国の上限時間である月10時間を大幅に超えて、市独自に月最大40時間まで預かる」という福岡市のような取り組みもあり。東京都の多摩市では、試行的事業(国)と東京都事業を組み合わせて月「1ヶ月60時間」を限度として預かるとしています。
この東京都の事業というのが、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」で、国に先駆けた東京都版こども誰でも通園制度とよばれている取り組み。実施要綱を読んでみると、東京都の各種一時預かり実施要項のに沿って実施されている感じですね。

一時預かりは保護者支援、こども誰でも通園制度は子どもを支援するものだと言われていますが、そもそもそんな線引きは不可能だと思います。
横浜市は、理由を問わない一時預かり事業に先駆的に取り組んできた自治体なわけで、一時預かりのweb予約システムも改善に改善を重ねてようやく本格稼働したところ。市も「何を今さら」という感が拭えないのではないかと推察します。あちこちで、「一時預かりでいいよ」(その方がより多くの補助金収入も見込めるし)って思っている事業者の声も聞きます。横浜で、試行的事業にあまり多く手が挙がらなかったのは、そんな背景もあるのだろうと思います。

とは言え、私たちの法人は、こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業に取り組むこととし、小規模保育「りとるピッピ」で、週2日それぞれ3人づつ6人定員の受け入れを予定しています。(連日予約問い合わせがきてます!)
実施にあたって、一時預かりの定員を一部こども誰でも通園制度の定員に充てることになり、収支の面から考えるとメリットはなさそうですが。
保育所という資源を全ての子育て家庭にひらく施策の方向性自体は間違っていない。この動きを後押しし、より良い制度となるようまずは試行的事業に取り組み、制度改善に向けて提言していきたいと思っています。