選挙は終わったけれど

自公与党が圧倒的多数を占め、野党の立憲民主党、共産党は議席を減らすという結果となった衆議院選挙。
コロナ禍が一定収束傾向にあり、また、与・野党の政策的な違いが見えづらい中で、「変えよう!」というメッセージよりも、より安定的と思われる政権が選ばれたのでしょうか。
大きく議席を伸ばしたのが日本維新の会ですが、そもそも小さな政府を指向する維新の会と、格差の是正や分配をも強調する岸田首相とは政策的には相入れないだろうし、選挙戦でも維新の会は政権への批判を重ねていました。政権批判票の受け皿ともなった維新の会は、大阪の19小選挙区のうち、15選挙区で議席を獲得、残り4区は公明党が議席を獲得しており、維新・公明連携による完勝と言える結果に。

気になる若者の政治参加
投票率は55.93%で、これは、戦後3番目の低投票率だったそうですが、前回2017年の衆院選の投票率も53.68%と決して高くはなく、特に10代は38・02%、20代は33・19%という低投票率に終わっています。
今回の選挙は、本来であれば、コロナ禍で傷んだ暮らしや経済の立て直し、気候変動問題やエネルギー政策、人権政策と、とりわけ未来を生きる若い世代にとって「待ったなし」の重要な政策について、有権者として影響力を行使する貴重な機会であったはず。
SNSでは、若手著名人などが投票を呼びかける動画キャンペーンに注目が集まっていたし、各選挙区で世代交代を象徴するような結果も散見されましたが、年代別の投票率はどうだったのか?
選挙後、早速に小選挙区での敗北を受け自民党幹事長が辞意を表明、議席を減らした立憲民主党の代表も辞任表明と、いずれも早期に対策が取られています。この一件からも、党内力学ではどうにもならない有権者の「1票の力」が見える化されてると思うのですが。
若者の政治参加は多少なりとも進んだのか否か、それがどのような選挙結果をもたらしているのか。今後の詳細な分析が待たれます。

多様性が社会を強くする〜大河原まさこさんの当選〜
こうした選挙の結果を受けて、国家や自己責任を強調する政治から、個を尊重し支え合い、分かち合う社会へと転換を図るにことは一層困難になったのではないかと危惧します。
そんな中で、東京21区で大河原まさこさんが議席を獲得できたことは一筋の光です。障害当事者として、大河原まさこさんがあらゆる人権に重きをおいて活動されることを期待しています。

今回の選挙では、465議席中、女性議員は45人(9.6%)となり、改選前の47人(10.1%)からさらに減少したようです。
2018年には政治分野の男女共同参画推進法が施行され、国の第5次男女共同参画基本計画では2025までに国政選挙の女性候補者比率を35%とすることが謳われています。しかし、今回の衆議院選挙における女性候補者の比率は17.7%。全く目標に届いていないようです。

コロナ禍で注目されたレジリエンス 。私たちは、様々なリスクに対して、いろんな選択肢を持って備える事の重要性を再認識しました。今まさに、多様な人々の政治参加が求められているし、これまで以上に女性や若者、当事者の政治参加にこだわりたい。

ローカルなテーマにも盛り上がった街宣
地元横浜市青葉区の様子も少し。
自民党候補の応援には、総裁選で注目を集めた党幹部が次々と応援にやってきて市民の関心を呼んでいました。地元の市会議員の皆さんからは、
横浜市政における新市長への厳しい評価や、新市長誕生に寄与した野党候補の責任を追求する熱のこもった訴えも聞かれました。
「衆院選で?」と思われる方もおられるかもしれませんが、先の市長選に野党共闘を持ち込んだ結果として、今度は国政選挙で市長選挙やその後の市政の課題が取り上げられるのも致し方ないこと。
もとより私は、横浜市長選挙が衆院選の前哨戦のように扱われることや、野党共闘を持ち込まれることに異議を唱えてきましたし、この問題について両陣営のリアルな論戦を聴いてみたかった。
選挙は、日常に増して政治への関心が寄せられる貴重な機会。支援者のみならず、時には厳しい意見にも向き合い、いかに対話を重ねていくのか、その姿勢が問われます。

選挙は終わったけど
今回の選挙では、マスコミ各社の世論調査と選挙結果にズレが生じたことも特徴的な事象でした。電話調査などの限界が見える中で、今後は新たな調査手法へと転換が進むことが予想されますが、それは、まさしく選挙手法の転換の必要性を示唆するものでもあると思います。
漠然とした政治参加を呼びかけられてもなかなか届かない若い世代に、たとえ国政選挙であっても市民に身近な存在として候補者の政治姿勢や政策を伝える努力は欠かせません。
私たち有権者もまた「どんな地域で、どんな関係性で、どう暮らしたいのか」を言語化し、目ざす社会のありようを伝えていかねば。
選挙は終わったけど、政治は暮らしの中にある。そしてまた選挙はやってくるのだから。