ホームヘルパーの乱
3人のホームヘルパーが国を相手取り起こした国家賠償訴訟
今日はその第一回公判日でした。
経歴も事業所も異なる3人のヘルパーが、裁判を通じて何を明らかにしたいのか、その声を聴きたい。そう思って、開廷前の地裁に滑り込みました。ところが、今日の公判は、傍聴券が交付される事案とされたようで(注目されている証拠だそう)、残念ながら傍聴は叶いませんでした。
その後の集会では、原告の3人のヘルパーの皆さんと弁護団の報告を聴くことができましたが、こちらも満席。この裁判に心を寄せている人は多いようです。
求人倍率13,1倍となるほど働き手不足の現場。
ヘルパーや事業所のせいでしょうか?
ヘルパーの仕事は、お家に行って仕事をしましたということで初めて報酬が発生します。キャンセルや入院があると仕事はなくなる。稼ぎが見通せない。もちろん、移動・待機時間に対価は発生しないし、「働いている=人権費が発生する」ということにもなりません。
じゃあ、キャンセルが発生した場合や移動・待機時間の賃金を事業所が負担できますか?それだけの報酬が保障されていますか?と言えば答えはNOです。3人のヘルパーさんたちは、労働基準法も守れない「介護保険法」にこそ原因があり、国がその責任を事業者に押し付けている構造が問題だと訴えています。今回の訴訟は、こうした「規制権限の不行使」に対して国家賠償を求めるもので、裁判では「これらを事業所が支払ったら潰れるよ」ということを原告側が証明しないといけないのだそう。大変そうです。
原告のお一人伊藤みどりさんからは、「給与はひと月9万の時もあれば、4万に届かないこともある。労災事故(2度の骨折)で労災認定を受け休業補償を得た際に「働いている給料よりも多かった」という衝撃的な話を聴きました。
ヘルパーが置かれているこのような実態はどの程度知られているのでしょうか。看護師の宮子あずささんが連載されているコラムで「自分とチームを組んで働いているヘルパーがこんな状況におかれていたことを知らなかった。」と告白されたというエピソードも印象的です
厚労省の見解
厚労省は、事業所に対して労働基準法を遵守するように行政指導を繰り返してきたし、あくまでも「事業所とヘルパーの間で労働基準法が守られてないだけでしょう」というスタンスなのだと言います。
今日出された答弁書でも、報酬単価が労働に対する対価でないことは認める。しかし、介護報酬の中に人件費が含まれていると主張しているそう。
法律守れば潰れてしまうってどうなのか。
山本弁護士は、日本では労働時間が決まっていない「0時間契約」は認められていないはずだが、まかり通っている、つまりは、働き手不足の大きな要因は、労働基準法も守れない「介護保険法」にあり、国はその責任を事業者に押し付けているということ。こうした問題は介護保険制度が誕生した時から内包されていたのではないかと指摘されています。
いずれにしても、在宅介護の現場で全国的に同じようなことが起こっている「証拠」を出していかなければならない難しい裁判だということはよく分かりました。
原告のお一人藤原るかさんは、取り戻した「消えた年金」をコツコツ貯めて100万円になったと。「(そのお金を)なんか使ってもいいかなと思いました」とポツリ。なんだろう。このざわざわ感。
ホームヘルパーの乱。私もまぜてほしい。心底そう思いました。