北東アジア非核兵器地帯化をいかに実現するか

27日、湯浅一郎さん(NPO法人ピースデポ代表)と学ぶ連続学習会(第2回)が開催されました。
前回第1回の講座では、「朝鮮半島を取りまく課題~これまでとこれから」というテーマで、軍事力による安全保障ジレンマの悪循環と、板門店宣言、米朝共同声明という2つの合意がもたらす可能性についてお話しいただきました。そして、今回は、さらに進めて「北東アジア非核兵器地帯化へ積極的に動こう!」というお話。
非核兵器地帯とは、一定の地理的範囲内において核兵器が排除された状態を作り出すことを目的とした国際法の制度で、
・第1に、地帯内国家が、核兵器の開発・製造・配備を禁止
・第2に、周辺の核兵器保有国が、地帯内国家に核兵器による攻撃や威嚇をしない誓約をするというもの。
湯浅さんが、非核兵器地帯構想のポイントとしてあげたのは以下4点。
1.2つの宣言が作った到達点を活かす -4.27「板門店宣言」、6.12 米朝共同声明-
2.5か国の朝鮮半島非核兵器地帯(KP-NWFZ)から北東アジア非核兵器地帯(NEA-NWFZ)へ
3.求められる忍耐と、相互信頼を高めていく姿勢。
4 .市民社会の役割
特に、4つ目のポイントに挙げられた「市民社会の役割」こそが今回のお話の重要な部分でした。
核兵器禁止条約(TPNW)が採択され1年が経過しましたが、湯浅さんは「核兵器の存在を禁止する国際的な法的枠組みができたことは画期的。(現在、批准したのは11か国)一刻も早い発効が期待される。」と評価。一方で、日本が、核保有国と禁止条約推進国との橋渡しの役割を果たすためという理由で不参加としていることについては「不当であると同時に自己矛盾している。」と厳しく指摘されました。
こうした情勢下で、禁止条約の署名・批准などを求める地方議会の意見書採択が進んでおり、2018年7月時点で約240の自治体議会で採択されているというデータも紹介されました。(神奈川県内では、鎌倉市、相模原市、大和市、逗子市、南足柄市で採択)
また、自治体首長の北東アジア非核兵器地帯を支持する署名も、これまで3度にわたり外務大臣ないし外務副大臣に提出されており、その数は2010年8月3日、103人、2012年3月29日、289人、2013年6月3日、409人と増え続けているとのことです。ちなみに、神奈川県内では、神奈川県、真鶴町、川崎市、大和市、清川村、平塚市、小田原市、南足柄市、寒川町、厚木市、藤沢市、大磯町、茅ケ崎市、逗子市、開成町、秦野市、箱根町の17自治体の首長が署名しています。
気になるのは、非核兵器地帯の実現可能性ですが・・・
世界には、すでに「非核兵器地帯」があり、115カ国・約27億人と世界人口の39%をカバーし、南半球では、陸地のほとんどが非核兵器地帯という状況も報告されました。
ヨーロッパにおける冷戦終結、ベルリンの壁崩壊に向けた道筋をつけたのは、1982年スウェーデンのパルメ首相が提唱した「共通の安全保障」であり、1986年レイキャビク会議を境に世界の核弾頭数は減り続けました。1995年には57か国が加盟する世界最大の地域的安全保障機構「欧州安全保障協力機構(OSCE)」が発足、欧州ではもはや大規模な戦争は考えられないという情勢を生み出したと言います。
一方、日本政府は、これまで核兵器廃絶を訴えながら、「日本を取り巻く国際環境の緊張や悪化を理由に、「核の傘」依存を進めてきました。しかし、今、その緊張は一気に緩和し、国際環境は劇的変化を遂げるであろう機会が到来しています。湯浅さんは「今こそ、日本政府は、北東アジア非核兵器地帯構想を持って、地域の平和と非核化に積極的に関与していくべきである。」とし、さらに、1910年の韓国併合から始まった植民地政策に伴う加害の歴史にも触れ、「韓国や中国には一定の清算をしているが、DPRKに対しては何もしていない。これは、拉致問題と比べても、圧倒的に大きな課題である。」という重要な指摘もありました。
さらに考えなければならないのが在日米軍の問題。これまでの米韓合同演習において主要な役割を果たしているのは、在韓米軍だけでなく、在日米軍です。
次回の学習会では、在日米軍が今のままの形で、北朝鮮への「安全の保証」は、確保できるのか?という問題に切り込み、北東アジア非核兵器地帯についてさらに議論を深めます。