県内自治体の介護予防・日常生活支援総合事業の実施状況は?

今年4月、2018年度〜2020年度を計画期間とする第7期介護保険事業計画がスタートするなか、介護事業者のサービスからの撤退を伝える報道も相次ぎました。
また、次期改定(2021年)に向けた厳しい議論が始まっていることも再認識させられるニュースも。

3年に一度大きく制度を見直してきた影響は大きい。
この間進めれてきたのは予防重視型システムや地域包括ケアシステムの構築。その一方で「骨太の方針2015」により社会保障費の自然増分の伸びを2016-18年度で計1兆5000億円抑制するといった目標も掲げられてきた。当然ながら、給付抑制や報酬引き下げをやらざるを得ない。2015年からは、要支援認定を受けた人の給付サービスの一部が切り離され、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)という新たな自治体事業に移行、2017年度までに総合事業の準備をしなければならないとされました。
神奈川ネット介護保険プロジェクトでは、こうした制度改定の影響や自治体の取り組みを調査してきました。
 県内33自治体のうち総合事業を実施しているのは16自治体(48%)。
公助から互助へ、地域の助け合いで乗り切れ!という掛け声が響いていますが、そのかけ声に応えられない状況も見えています。
横浜市の総合事業の実施状況は以下の通り。

1. 横浜市訪問型生活援助サービス(訪問A)について
・居宅サービス事業者・介護予防サービス事業者数が約800であるのに対し、横浜市訪問型生活援助サービス事業所数は313にとどまっている。
2. 補助事業所数(サービスB)について
・訪問型支援は18区中13区で未整備、配食サービスは14区で未整備、見守り支援は2区のみで展開。
・最も整備が進む通所支援も全市で21箇所。148の生活圏域に対する整備率は14,2%。
・サービスBが未だ展開されていない(ゼロ)が3区。
横浜市はあらゆる施策において18行政区で偏りなく施策を展開することを旨としてきました。横浜型地域包括ケアシステムの展開にあたって、市は『本市は面積が広く、地域によって高齢化率、高齢者の将来推計等に大きな差がある」という課題をあげていましたが、総合事業の実施状況は市内均衡を図る以前に総じて低調です。第7期計画においても生活圏域に等しく展開する計画値とはなっていません。
高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画は議会の議決を要する計画ですが(議会基本条例により)、補助事業所数(サービスB)については、計画値を提示できないまま議決されるなど、厳しい準備状況であったことが推察されます。

22日、とつか区民活動センターで、生活クラブ運動グループ13団体で構成する「戸塚まちづくりユニット」の学習会が開催され、神奈川ネットの介護保険プロジェクトの調査報告をさせてもらいました。


基礎自治体でありながらも、370万人超の人口を擁する横浜市にとって、総合事業の定着にはそれなりの時間と準備が必要となるでしょう。ボトムアップの仕組みを作るのであればなおさらです。しかし、財務省財政制度審議会 (財政制度分科会)では、すでに次期改定に向けた議論が始まり、要介護1・2の者の生活援助サービス等の更なる地域支援事業への移行や、在宅サービスの総量規制やサービス供給量を自治体がコントロールできる仕組みの導入も検討が始まっています。2018年の制度改定は2025年への通過点と言わんばかりの状況で、制度改定の効果も見えないま次期改定の議論しなければならないサイクルの中で、自治体は国の動向を見ながら仕事をしています。
これでは、自治体も総合事業の制度設計に積極的に取組むモチベーションが持てません。給付と負担の関係が明確な社会保険方式という制度の原点を踏まえた制度のあり方を確認すべきです。