「いざという時につかえないかも!」介護保険フォーラム報告
2018年度の介護保険制度見直しに向け、社会保障審議会・介護保険部会の議論が着々と進められています。しかし、その議論は財政の帳尻合わせのようで「給付縮減、報酬削減、負担の引き上げ」の3つの選択肢の中でぐるぐる回り状態。そんな中で迎えた今年の「介護の日=11月11日」には、横浜市開港記念会館で介護保険フォーラムを開催しました。
フォーラムは、鏡諭さん(淑徳大学教授)の基調講演でスタート。まず、普遍的制度としての介護保険制度の原点を確認しました。「所得や家族状況によらず給付を受ける権利がある」これが介護保険制度の普遍性ですが、2015年度の改定では、介護リスクが同じでも一定以上所得がある人は利用者負担は2割とする、あるいは原則要介護3以上を施設入所者とするなど、給付対象者の選別も行われており、普遍性の理念は大きく揺らいでいます。
鏡さんからは「介護保険サービスを使っているのは被保険者の7,8%に過ぎず、給付を受けていない92%の人が平均月額5,514円を負担している状況がある。だから財政論が優先されがちになるのだろう」との指摘もありました。そもそも、2015年度の制度改定は、2006年の改定時に導入した介護予防について事業仕分け等の指摘もあり、財務省からの4100億円の予防給付縮減要求に端を発した見直しでした。財政論から始まる議論というのは、こんな着地になってしまうものなのでしょうか。
第2部、現場からの報告では、ヘルパーやケアマネから、生活援助といえども専門性が必要とされる事例が次々紹介されました。要介護1、2でも様々な疾患を抱え、なおかつ家族関係も複雑であったり、子育てと介護が同時進行するダブルケアも増えています。国が軽度者と言っている人たちへのケアの現場は想像以上に厳しいもので、軽度者というのは給付を切るために無理やりつくた概念じゃないのかとさえ思えます。しかし、給付から外れる要支援者へのサービスとしてスタートした総合事業も、多くの自治体で「介護予防給付相当」のサービスの実施にとどまっています。多様な担い手の発掘もそんなに簡単には進まないようです。
民生委員や保健師、自治会町内会、ボランティア団体等が地域福祉の領域で行って来た活動と、社会保障の制度としての議論は別物のはず。「公的支援はできるだけ小さく、狭間は地域力、コミュニティ力で埋めて欲しい」というのはやっぱり違う。諦めず声をあげていこう。