地域包括ケアの実践〜市民事業の現場から〜
16日、横浜市緑区にある「るるる*みどり館」と「くまさん」を視察しました。
るるる*みどり館は、18年間の活動で生まれた8つのサービスを提供するワーカーズ・コレクティブが集まる地域福祉拠点です。区内に点在していた福祉事業所が連携できたきっかけは、食事サービスのワーカーが、配達先の壊れた玄関とびらを直してあげられなかった経験だったそう。最初の一歩は「この人のために」からでした。
急速な認知症高齢者の増加が予想されるなか、るるるには、認知症対応型デイサービス「Dayみどり」も開設されています。困難な事例も多く、家族だけで支えることが難しく施設入居となる事例や、ショートステイサービスに馴染めない、事業者から敬遠される等の理由からお泊まりデイを選択する事例も多いそうです。毎月第4日曜日には、「いきいきるるるサロン」も開催、20代〜60代までの方たち約30人が集まり、地元の皆さんのバンド演奏で楽しい時間を過ごされています。ボランティアや出演者も徐々に広がっているとのこと。地域に暮らす方々が運営する強みです。視察中にも、中学生の職場体験受け入れ依頼や、通院で朝から食事が摂れていない何とかなりますか?といった相談が飛び込み、「何か見繕うからいらしてください」といったやり取りを耳にしました。なぜ、ここに困難事例が集まってくるのか、その理由の一端を垣間見た思いです。
続いて、今年20周年を迎えたNPO法人ワーカーズ・コレクティブくまさんへ。くまさんは、訪問介護、居宅介護、通所介護といった介護保険事業や産前産後支援事業を実施されています。山坂の多い地域で、くまさんの特色は外出を目的とした歩行訓練を組み込んだデイサービス。独居の利用者も多く、会話することも大事、食材にこだわりひと手間かけた食事も好評です。今後は、生活機能の維持・向上の効果をデータとして提示し、小規模デイサービスのメリットを可視化していきたいとのこと。目まぐるしい制度改定への対応に追われ、再編される地域支援事業の具体的な事業の形も未だ見えず。動きだしたくても動けないジレンマも抱えつつ、日々良いケアをするために利用者に向き合われていることが伝わって来ました。
地域包括ケアシステムを構築する鍵は、 「この人のため」に必要なこと・モノ・人を発見できる専門性を持ったワーカーの視点やコーディネート力です。公的サービスと独自サービスをつなぎ合わせ、子育て支援から高齢者支援まで地域で必要とされるサービスを提供し続けてきた皆さんの実践は、地域包括ケアシステムそのものであるとあらためて気付かされました。