学習会「生活困窮者の就労支援はどうあるべきか」
生活困窮者自立支援法が施行され、4月から全国901の自治体で事業がスタートしています。5日には、ワーカーズ・コレクティブ及び非営利・協同支援センター主催の生活困窮者の就労支援に関する学習会が開催されました。困窮者の就労準備事業の実施状況や課題などについて、NPO法人ワーカーズ・コレクティブ協会の岡田百合子さんとともに、神奈川ネット若者就労支援プロジェクトの調査も踏まえ私からも報告させていただきました。また、様々な分野で仕事をつくり、共に働いておられるワーカーズ・コレクティブの皆さんの実践も伺う機会となりました。
障がい者、若者、高齢者などの就労支援・社会参加の場づくりに取組んで来たW.Coの現場では、「就労準備支援事業」や「就労訓練事業」が制度化されたことに期待の声が聞かれます。しかし、全国自治体で(*1)任意事業である就労準備支援事業に取組む自治体は253自治体(28%)に留まっています。県内では横浜市、相模原市、横須賀市、藤沢市の4市。横浜市は、生活困窮者自立支援制度と生活保護制度を一体的に運用していますが、今年4月から7月までの就労準備支援事業の実績は、新規申込者が16人でうち15人は生活保護受給者で占められています。生活保護に至る手前で、支援の必要な生活困窮者を把握することの難しさが現れています。支援プログラムを利用する資格要件のハードルも制度が活用されない大きな要因だと思われます。
同期間の新規相談者は1,164人ですが、直接相談窓口に相談された人が762人、残り402人が庁内他部局や関係機関から繋がった人ということになります。個別的で包括的な切れ目 ない支援が求めらているなかで、厚生労働省も「生活困窮者自立支援制度と関係制度等との連携について」としてたくさんの通知を発しています。教育施策との連携についての通知もあるようですが、教育機関からつながる相談は極めて少ない。生活困窮者自立支援事業以前の既存福祉施策などと新制度が有機的に連携し運営されているのかという問題を始め、検証したいこと山積みです。
厚生労働省がまとめた支援状況の6月実績を見ると、「就労訓練」を利用した人は全国で6人。就労訓練を実施する事業者認定が殆ど進んでいない状況です。手続きが煩雑であること、常に就労者の中に生活困 窮者が一定割合以上を占めていることを求められていること、災害補償に関する要件が課せられていることなどが要因だと思われます。ワーカーズなど地域の小規模事業者が認定事業者になることは難しいとの声も聞かれます。訓練事業者への税制優遇制度や優先発注のしくみが作られたことを生かしきれていないのは残念です。就労訓練についても、 (*2)横浜市就労訓練事業支援センターの運営状況も注視しながら、制度の目的である「困窮者支援を通じた地域づくり」 に資する取組みとなるよう、引き続き調査・研究を進めます。
岡田さんは、昨年度協会が受託されたの就労準備支援モデル事業も振り返り、「就労を目標にした人たちの就職率は高かったが、住まいの確保・安定や健康状態や生活習慣の改善では、就労を目標にしなかった人たちより低い結果が出た。働くことをめざしたら、生活の質の改善はなかなかできない結果となった。生活の質も担保できる働き方の必要性がデータからも見えてきた。」との見解も示されました。これは、困窮者に限ったことではなく、労働者全般に関わる「働き方=ワークライフバランス」にも通じる共通の課題として捉えていきたい問題です。
(*1)その他の任意事業の取組み状況:一時生活支援事業172自治体(19%)、家計相談事業205自治体(23%)、子どもの学習支援300自治体(33%))