「利活用」の視点を持って進める「空家対策」
NPO法人横浜プランナーズネットワーク(横プラ)の内海宏さんに、空き家問題とその利活用についてお話しいただきました。
今年5月には、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行されています。特措法に先立ち、空家に関する条例を制定している自治体もありますが、それらの多くが「適正管理」を謳ったもので、「利活用」を推進する取組みについては殆ど触れられておらず、古い家屋を、公共のみで維持管理する事の難しさが現れています。
横プラが実施した横浜町丁別世帯数の動向調査(2008~2013年/横浜市より受託)では、都市部と郊外部の空き家の発生メカニズムが異なる状況も明らかにされています。まだら模様のマップからは、民間の大規模開発によって短期間に開発された地域で一気に高齢化が進んでいる状況も読み取れます。
横プラは、2007年から横浜市の委託事業で空き家活用相談窓口事業を実施したものの、3年間は実績ゼロという状況もあったそう。内海さんが関わった事案から、空家を活用したコミュニティカフェや交流サロン、公園を使ったフリーマーケット、畑や空き家の庭を使った活動、独り暮らしの高齢者などを対象に、買い物サポートや庭木の手入れ等を有償で実施する暮らしの応援グループの立ち上げなど、「住み開き、庭をひらく」活動や農的空間の活用など、非常にユニークな事例も紹介いただきました。
事業の立ち上げには、横浜市独自の「まち普請事業」が効果的に活用されており、その後の自主財源拡大に向けては、資源集団回収や自販機設置、協賛金やバザーやあおぞら市、弁当販売などの取組みも紹介されました。まずは、マッチングの具体例を示すことで、他の取組みも推進されるのではないでしょうか。
横浜市は、2014年度の住宅・土地統計調査から、市内の空家総数(共同住宅等の空き室を含む)は約178,000戸であり、住宅総数の1割を占めるとしています。今年度中に特措法に基づく協議会を設置し空家等計画の策定を進めることとし、すでに、横プラを含む専門家団体との連携協定を締結し空家の適正管理に向けた啓発PRを行っています。
こうした取組みにおいても、困った空き家の管理ではなく、創造性を持って活用する視点が求められ、当然、空家等の調査においても同様に「利活用」の可能性を捉える視点が必要です。今後も、様々な市民活動を生かした制度提案に取組み、新しい公共への転換を進めていきたいと思います。