待合室になっている?「横浜保育室」
4月30日、横浜市は、「平成27年度4月1日現在の保育所等利用待機児童数について」を公表しています。今年は例年よりもなんと3週間も早い時期の発表。さすがに力入っています。待機児童数は8人ですが、保育所等利用申請者数は増加を続けており、今後は、「希望通りの保育所を利用できていない人」=保留児童対策をやりますとのこと。
しかし、この「希望」を測ることが、実はすごく難しいのではないかと思っています。待機児童問題がクローズアップされる中で、可能な限り認可保育所の整備を進めるという自治体の取組みと相まって、入所の可能性があるのであれば保育所を利用したいという人だけでなく、まずは認可保育所にエントリーしておこうという人も確実に増加しており、潜在的な保育ニーズというのもかなり幅広になっています。
首都圏某市で保育所を運営されている方からは…保育所の入所承諾通知が届いた日にたまたま市役所に出向いたところ、保護者から次々とかかってくる入所辞退の電話に「さすがにそれはないだろう!」という職員の罵声が飛び交いピリピリ感いっぱいだったというお話を聞きました。横浜市では、そんな事が起こらないようあらかじめ辞退の可能性についても一人ひとりに確認を行うんだそうです。入所辞退数については把握されてないそうですが、全ての人に確認しているとしたらその仕事のボリュームは大変なものだと推察します。
昨年あたりから、身近な横浜保育室で定員割れに悩む声を聞くようになりました。共通しているのは、年度当初の定員割れだけでなく、年度途中の退園、転園の問題です。どうやら入所児童に対して「○○保育園(認可保育所)に空きができましたので、転園しませんか?」といった保育コンシェルジュさんからのアプローチがあるようです。『ようやく園に馴染んだかなという時期に転園することに迷われる方もいますが…最終的にはせっかく認可に空きが出たんだからってことになる。何だか、うちは「待合室」のようになってます』というスタッフさん。
以前は、「ここの保育が良くて」「この園に入りたくて」と、保育室を選んで来られる方が多かったのに、ここ最近は、「横浜保育室も一度は見ておいたほうが良いと区役所に言われたので」とやってくる人も増えているとのこと。直接契約で入所決定できるしくみは“横浜保育室らしさ”のひとつだったのですが、様子が変わっているのですね。
認可保育所整備に力を入れている横浜市は、市の独自予算で運営してきた横浜保育室についても、できるだけ認可保育所に移行してもらおうと、国の予算を活用して認可移行の後押しをしています。施設改修を実施しても保育所基準を満たせない施設については、0~2歳の乳児のみを対象とする認可保育所(20人〜50人)という新しいスキームも打ち出し、移行支援を進めています。
しかし、現場からは、こんなに子どもが集まらないのは開園以来…認可保育所でも定員割れしているのに大丈夫かしら…3歳以降の預け場所を心配する人も多いんじゃないかしら…など不安の声も聞かれます。
横浜保育室の延長線上にあって、同じ0〜2歳を対象とする小規模保育事業よりも定員が多い乳児認可保育所。小規模保育(0〜2歳、19人以下)については、連携する保育所や幼稚園に市が助成し、3歳以上の児童の受け皿確保を後押ししています。が、乳児認可保育所との連携を後押しする制度はありません。しばらくは「希望通りの保育所を利用できない人」は確実に発生し、役所が入所の措置をするわけですから、どの施設に入っても、学齢期まで安心して過ごせる環境を用意できることが望ましいと思います。
小規模保育についての過去のエントリーでも触れましたが、待機児童数の報告とともに、ここ5年間で、横浜市の一般会計予算に占める待機児童対策予算(保育所等運営費を含む)は、4.9パーセントから 7.3 パーセントへ拡大してますよというデータも示されており、役所の中でもいよいよ待機児童対策は曲がり角にあるという認識が広がりつつあるのだなと受け止めています。それでも、今年度は、認可保育所と幼保連携型認定こども園の整備で2115人分の受け入れ枠の拡大を図るそう。この間進めて来た認可保育所整備路線を大きく転換することは現実的ではないのでしょうが、待機児童対策にも貢献して来た横浜保育室の今後については、現場の声を制度に生かす努力が必要です。
神奈川県公表資料