「乳幼児等医療費助成制度」子どもの医療費の無償化について
現在、公的医療保険制度では、0歳児~就学未満の医療費に対する自己負担は2割、小学校入学後は 3 割とされています。乳幼児等医療費助成制度は、この自己負担の部分を自治体の公費で負担するもので全国的に拡充傾向にあります。9月議会では、中学校卒業までの小児医療費を無料化する全国一律の制度を創設することなどを求める意見書案も議案となりましたが、私は、この議案に反対を表明しましたので、以下、見解を記します。
子どもの医療費助成の目的として、子どもの健康保持・増進、子育て環境の整備に向けた経済的負担の軽減、また少子化対策としてもその効果があげられています。一方で、予算規模の大きいこの事業が自治体財政に与える影響は少なくありません。
例えば、横浜市でも所得や対象範囲(通院・入院など)に制限を付けて0歳から中学卒業までの医療費助成を実施しており、その予算額は72億4400余万円(2013年度)で、予算規模は年々増大しています。「制度運営に当たって各自治体は財源の確保に苦心 している」として、横浜市は、国に対して医療費助成に係る自治体の負担を軽減するために、まず就学前児童に対する医療費の自己負担額を1割に引き下げる健康保険法等の改正を求めています。
医療助成制度のデメリットとして、医療費を助成することでコンビニ受信を助長し、その結果、医療費が増大することや小児科医不足を懸念する意見もあります。しかし、これらについては、県の医療費検討委員会の中でも、「無償化された公費医療の部分を取り出して分析することは困難」(医療保険課)と述べられているように、制度の影響を具体的に把握し検証されたものではないと思われます。同様に、医療費助成が子どもの医療環境や健康にどの程度寄与しているか、対象年齢や所得制限の有無でどのような変化があるのかということについても統計的な検証を行うことは難しいと思います。
子育て当事者の立場で考えれば、こういった助成制度に反対する人は少なく概ね歓迎される取組みでしょう。しかし、医療費を公費で負担するということは、税を投入するということであり市民の合意を得るために政策効果を明らかにすることは必要です。政策効果という点から考えれば、まず、慢性疾患や長期入院の事例、低所得者などへの対策を優先する選択もありだと思います。子育て環境の整備を目的とするのであれば、他の子育て支援施策や小児医療の基盤整備も含め社会保障制度の中で議論すべきではないでしょうか。また、少額であっても自己負担を残すことも選択肢であると思います。