教員OBが担うスクールソーシャルワークの課題

 神奈川県教育委員会では、いじめや不登校、児童虐待などの課題解決を図ることを目的に、教育の分野をはじめ社会福祉に関する専門的な知識や技術を有する人材としてスクールソーシャルワーカー(SSW)を教育事務所に配置しています。県内の学校における暴力行為発生件数や、いじめ認知件数と不登校児童・生徒数については、依然として高い水準で推移しており、9月議会の補正予算では、あらたに教員OB等をスクール ソーシャルワーク・サポーターとして市町村教育委員会に配置する事業費、1760万円が計上されました。

 SSWには、子どもたち一人ひとりを取りまく環境にアプローチし包括的な支援を展開することが期待されており、その活動も広範囲に渡っています。しかし、配置人員は7人、また、勤務日数及び勤務時間は、年間35日又は70日、合計245時間又は490時間と制限されているなど、4,500件のいじめが認知され、13000人を超える不登校児童・生徒数が確認されている状況に十分に対応できる体制となっていません。まずは、SSWを拡充する方針を持つべきです。

 そもそも、SSWが学校に入る意味の一つは、教育とは異なる価値観と方法をもって、子ども達の課題を解決するところにあります。教員OBがソーシャルワーカーの肩書で活動することは本来の事業目的にそぐわず、さまざまな困難が予測されます。SSW・サポーターの派遣にあたっては、SSW同様、社会福祉士や精神保健福祉士等の資格を有する者のほか、教育にとどまらない福祉との両面に関して専門的な知識・技術・活動経験を重視すべきと考えます。また、これまでSSWを活用してきた市町の意向も十分尊重すべきです。

 すでに、県教委からSSW・サポーターの推薦依頼が、教育指導主事を通じて政令市と中核市を除く県内市町村の教育委員会に出されているようですが、SSWが何たるかがきちんと説明されないままでは、教員OBありきの推薦となってしまうのではないでしょうか。
 この事業は、住民生活に光をそそぐ交付金を原資とした基金を活用した事業で、基金は2年以内 (2012年度中)に全額取り崩すものとされています。基金をとりくずした後、事業をどう活かし展開していくのか、そのビジョンも問われます。
以上の問題意識から、私は、昨日教育長あて文章質問を提出しました。また、経過をご報告いたします。