防げる?名義貸し

2月議会において、市長から「横浜市墓地等の経営の許可に関する条例」の全部改正案が提案されています。
条例改正のポイントは、民間業者が寺院などの名義を借りて墓地を経営する「名義貸しの防止」でした。

横浜市においては、以前、横浜聖地霊園建設に際し、石材店がSPC特定目的会社を使った資金集めを行っていたことが国会でも問題になるなど、名義貸しへの精査について疑問を持たれています。また、多額の負債をかかえ、公益法人の設立目的を逸脱したとして、財団法人の許可を取り消された「日本墓園」において、長期に渡り違法状態が続いていたという事件もありました。

霊園倒産は、周辺住民や利用者が被害を受けるだけでなく、大きな社会問題となります。近年の社会情勢の変化による無縁墓地化も懸念されており、墓地建設をめぐる紛争は後を絶ちません。

改正案では、周辺住民と事業者との円滑な合意形成を促進するために、話し合いの義務化・有期限化も規定するとしていますが、紛争解決手続期間の有期限化を打ち出す前に、紛争が起きない手立てを考えるべきではないでしょうか。
例えば、千葉市では、宗派不問の墓地は市営で、宗教法人は寺の境内墓地に限定しています。実際、こういった対策により、紛争は激減しています。

横浜市では、これまでも要綱で財務基準を規定し、財務の状況にかかる報告書の提出も求めてきたし、公認会計士や弁護士のサポートも受け、生活衛生課の優秀な専門職員が指導監督事務を行ってきたはずです。しかし、それも「知り得ている情報の中で」の事務であったとのこと。ここが限界。国も名義貸しを財務からチェックすることは困難だとしています。

墓地、埋葬等に関する法律は、決して名義貸しを容認するものではありません。厚生労働省も、名義貸しについては厳しく禁じており、名義貸し墓地の温床である宗派不問の事業型墓地は、認めないといった強い姿勢が必要ではないでしょうか。横浜市の見解は、「条例制定権の範囲を定めた地方自治法第14条や営業の自由を定めた憲法第22条を持ち出して規制ができない」とのことです。しかし、墓地に関する指導監督の事務は、地方公共団体が自らの責任において行う「自治事務」ですし、現に多くの政令市でも、事業型墓地の規制を行っています。

墓地埋葬法でも、墓地等を経営しようとする者は、「都道府県知事の許可を受けなければならない=許可しないことができる」と規定されています。厚生労働省の「墓地経営・管理の指針」にも、「墓地は、公共の利益との調整が必要な施設であり、土地の所有権や利用権を有するからといって、誰でも自由に設置できるという性質のものではない。」ことや、「単に公衆衛生上の規制にとどまらず、その他の公共の福祉の見地からも制約を加え、調整 を行うべきもの」と明記されています。「営業の自由があり、申請に対して許可等がなされることが前提となっている」という健康福祉局の見解は疑問です。