地域主権改革のゆくえ

神奈川ネットの議会改革プロジェクト主催のフォーラムで、辻山幸宣さんから、地域主改革についてお話しいただきました。

民主党が、改革の1丁目1番地としてきた地域主権改革については、地方行財政検討会議の中で、自治体の基本構造や住民参加のあり方、さらには、地方議会制度の根幹である二元代表制にも踏み込んだ問題提起も行われ、道州制を全面に押し出した旧政権の改革とは明らかに異なる議論が行われているものと思っていました。6月末に閣議決定された地域主権戦略大綱の、義務付け・枠付けの廃止、市町村への権限移譲、そして、ひも付き補助金に変わり一括交付金化を目指す方向性も間違っていないと思います。しかし、大綱では、地域主権の確立に向け、自治体や議会の仕組みがどうあれば良いかといった住民によるガバナンス論に踏み込むことなく、一括交付金についても「関係府省と共に検討」するとの文言も加わり国の関与の余地を残すなど、結果的には総務省にコントロールされたことは否めません。

4月に参議院で可決された地域主権推進一括法案では、121条項の義務付け・枠付けの見直しが示されています。(以下の通り)
①施設・公物設置管理の基準→国が決めていた基準に代えて条例で基準を規定
① 協議、同意、許可・認可・承認→国の関与を廃止又は弱い形態の関与へ
② 計画等の策定及びその手続等改正の対象となる事項→計画等の策定義務を廃止へ
しかし、①について、条例に委ねる場合にも、Ⅰ)従うべき基準、Ⅱ)標準、Ⅲ)参酌すべき基準に分類されており、Ⅰ)の従うべき基準については、「厚生労働省で定める基準に従い条例で定める」とされています。となると一字一句国の基準をなぞった条例を自治体議会が議決することになるのです。
現在の地域主権改革には、それを実現するための住民自治の思想が見えません。これまで進められてきた、「権限委譲」「三位一体化改革」といった地方分権改革を振り返っても、残念ながら自治体の自由度の拡大つながるような見るべき成果があげられていません。地方自治体の自治力を高めるためには、住民自治を強めるが不可欠であり、そのためには、議会の質を高めることや機能強化が強く求められています。