横浜市では、2010年度、地域ケアプラザと連携した小規模多機能型居宅介護事業のモデル事業に取り組みます。小規模多機能型居宅介護事業は、事業所に登録した利用者(上限25人)に対して、デイサービス、訪問サービス、宿泊サービスの3つのサービスを提供する介護事業です。横浜市では、06年から3年間に小規模多機能施設の整備促進のための事業を進めて来ましたが、市の整備目標150施設に対し32施設の整備に留まるなど、事業への参入が進んでいません。
一方、地域ケアプラザは、市が設置し指定管理者が管理運営しており、来年度、開設される2カ所を加えると市内121カ所になります。デイサービス、居宅介護、地域交流事業を始め、2006年以降は地域包括支援センターも併設され同一法人が運営に当たっています。
さて、来年度新たに取り組む、地域ケアプラザと連携した小規模多機能型居宅介護事業では、これまで地域ケアプラザの事業として取り組んで来た、デイサービスや居宅介護事業とは別に、ケアプラザの中に一定の面積を確保し、そこで、小規模多機能型のデイサービスと居宅介護事業を行い、泊まりのスペースも確保するそう。つまり、地域ケアプラザで、2種類のデイサービスと居宅介護事業が展開されるということです。
同じ法人が、同じ建物の中で、エリアと対象者を分けて、それぞれスタッフを配置し、サービス体系は異なるものの実質的に同じ事業を2パターンで行なうことになります。それぞれに事務作業も発生します。
利用登録が伸びず、事業が不安定な小規模多機能居宅介護事業への利用を促進するために、従来のデイサービスや居宅介護事業からの移行を進めるねらいはあるかも知れませんが、そうまでして、小規模多機能型サービスの実績を上げることにどれだけの意味があるのでしょうか。
地域ケアプラザでは、すでに、デイサービス、居宅介護事業が展開されているのだから、ここに「とまり=ショート」を加えれば、それだけで3つの機能が揃います。圧倒的に不足しているショートを確保する試みというなら意味があると思います。そういった横浜型小規模多機能モデルを考えてみてはどうでしょうか。そのほうが面白いと思います。
小規模多機能型サービスの整備が進まないのは、横浜だけではありません。ニーズに添わない厚生労働省の制度設計がもたらした結果であり、利用者がこのサービスをなぜ選ばないか、事業者がなぜ参入しないか、その課題を直視すべきです。
市内に121カ所も整備されている地域ケアプラザを最大限活用すれば、全市で150か所を目指すとする「第4期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」の目標は達成されるかもしれません。それが、利用者が望む地域福祉の充実につなが流のかということをあらためて考えるべきです。