ふじみ野市で起きた公営プールの事故をきっかけに、指定管理者制度や委託事業における公・民それぞれの管理責任があらためて問われています。
官から民への流れが加速し、公的サービスは、公と民の関係性のみで提供されるのではなく、民と民の関係で提供されることも視野に入れなければならなくなっています。日常的にその業務が適正に執行されているかをチェックすることや、問題が生じた場合の利用者救済やその責任の所在を明らかにする第三者機関の必要性はますます高まっています。 90年代に、各地で自治体オンブズマン制度が導入されてきました。横浜市でも95年に福祉オンブズマン制度である福祉調整委員会が設置されました。
委員会の報告を見ると、昨年度の苦情相談等の総件数は593件で、福祉保健サービスに関するものは452件です。しかし、そのうち苦情申立てとして福祉調整委員が面接相談した件数はわずか20件です。その他432件は、予約受付の段階で福祉調整委員会事務局(職員)によって処理を終えています。
本来、調整委員会は、行政とは独立した第三者的立場から、公正中立に調査し適正な判断を示すことが求められているのであり、行政職員が個々の問題を相談の入り口で調整してしまうやり方には問題があるのではないでしょうか。人口360万人の横浜市で、年間20件という相談件数の少なさも気になります。
オンブズマン条例、オンブズマン憲章を持っている多摩市は、「苦情は利用者からの期待の表れであり、サービス改善のヒントとなる情報の宝庫である」と表明しています。
小さな声、一つひとつの事例から政策課題や構造的な問題を発見することができます。また、ハインリッヒの法則で言われているように重大事故は突発的には起こるものではなく、その以前に小さな事故が数多く起きているはずです。
横浜市役所は巨大な役所です。そこに向きあう一人ひとりの市民と対等な関係性で問題解決をはかるためには、福祉分野に留まらず、第三者機関としてその目的を果たすオンブズマンの制度を整備することが急務です。