エッセンシャルワーカーと呼ばれて

新型コロナウィルス感染が拡大する中で、各国のリーダーがスピーチの中で発したエッセンシャルワーカーという言葉は、日本でも一気に広がり、介護ワーカーもエッセンシャル(必要不可欠)な仕事として認識されることとなった。政府の2次補正により、全ての介護職員に対して慰労金(感染者が発生した、または、濃厚接触者に対応した事業所に勤務する職員には20万円を支給。その他は5万円を支給)も支給されることになり、おかげさまでうちのヘルパーステーションのワーカーもこの給付金をいただけるようだ。

3K労働の典型のように言われてきた介護事業の中でも、おそらく最も苦しい経常状況にあるヘルパー事業は、これからも「必要不可欠」な仕事として正当に評価されるのだろうか。深刻な担い手不足にあえいでいる現状は改善されるのだろうか。
介護の最後の砦とまで言われたヘルパーたちが、いつもと変わらず訪問介護を続ける姿を眺めながら、そんな想いがふつふつと湧いてきた。
コロナ以前に介護の崩壊の危機は進行していたのだから。

6月1日には、厚生労働省から、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等 の臨時的な取扱いについて(第12報)」が出された。臨時的な取り扱いとは、デイサービスの報酬について、実際に提供したサービス時間より2区分高い報酬を算定できる特別なルール(月あたり一定の回数まで)を適用するというもの。
例えば、
実際は、4時間のデイサービスを提供した場合に 6時間提供した場合と同じ報酬を算定しても良いというようなルール。
『えっ?』それってマズくないか。
事業所に入る介護報酬の1〜3割(所得に応じて)は利用者が負担する仕組み。新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価するためと言われても、使ってもいないサービスの利用料を利用者に負担させるのは忍びない。もちろん、厚労省の事務連絡には、「介護支援専門員(ケアマネ)と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合に」と但書きもあるが。
利用者に寄り添うケアマネさんはどうだろう。怒ってるんじゃないだろうか。

新型コロナウィルスの感染拡大予防のための自粛や利用控えにより、多くの事業所が収入減となり、運営状況は厳しい。感染拡大のリスクもいまだ消えず、第2波も懸念されるなかで、事業を継続できるのかという不安もある。
必要な人に必要なサービスを提供するためにより多くの介護報酬を確保したい。そう考えるのは至極当然だけど、果たして、この「臨時的な取り扱い」にのっかる事業所はどの程度あるのだろうか?

本来は、公的補償で支えるべきだろう。
新型コロナウィルス感染症の蔓延という個人や事業所の責任では負えない事態への対応としては、お粗末と言わざるを得ない。
コロナ禍以前から始まっていた介護現場の崩壊を食い止めるためには、抜本的な報酬引き上げが必要。
その意味では、社会保障審議会介護給付費分科会の義論も、あらためて注目したい。
エッッセンシャルワークーの価値を認識して真摯な議論を進めて欲しい。