流域治水対策を学ぶ

10月12日、台風19号は神奈川県内にも記録的大雨を降らせました。神奈川県西部では観測史上最多の降水量を記録し、各地に深刻な被害をもたらしました。
相模原市緑区にある城山ダム(神奈川県企業庁)は、1965年の運用開始以来、初めての緊急放流(*1)を実施しました。

11月11日には、立憲民主党神奈川のヒアリングに参加し、神奈川県庁の県土整備局河川課および相模川水系ダム管理事務所 から城山ダムの緊急放流について説明を受けました。

予備放流〜緊急放流
10月11日、城山ダムでは、雨雲、台風通過予定時間を勘案して、11日 の14 時に予備放流(*1)を開始、下限(113m)を若干超える 112.07mまで水位を下げて、貯水量を余分に確保していました。
12日午後9時半には、ダムの治水容量の限界に達したため緊急放流が行われました。相模川の堤防が堪えうる流量は、最大放流量 3000m3/秒ですが、緊急放流では城山ダム史上最大の4100m3/秒を放流。ダム管理事務所職員は、気象レーダー(雨雲)と台風の進行をにらみつつ、下流へ 流す水位を抑えるための30秒刻みのゲート操作を行ったと言います。
堤防は、2mの余裕高を持って破堤することなく持ちこたえました。流域自治体からは、放流開始時間の変更の対応に苦慮したといった意見も聞かれましたが、流域への影響を最小限に食い止めたことを評価すべきではないでしょうか。

いくつかの「幸運」

今回、同じ相模川水系にある宮ケ瀬ダムは緊急放流を行っていません。また、緊急放流時刻は相模湾の満潮時間とも重なりませんでした。つまり、いくつかの「幸運」な要素があって破堤を防ぐことができたのではないかとの思いも過ぎります。私たちは、「今回大丈夫だった」が正常性バイアスとなら無いようにように留意しなければなりません。

検証すべきこと
台風19号の豪雨による堤防決壊は全国で、71河川130か所に上っていますが、例えば、川床の掘削・浚渫は適切に行われていたのか、堤防の沈下は無かったのかなど、丁寧な検証が待たれます。
相模川水系で言えば、国管理の宮ケ瀬ダムとは、「情報交換はするが流域が違い、それぞれのダム操作規則があるので、今回も調整は行っていなかった」そうですが、相模ダム、沼本ダム、道志ダムも含めて、非常時にどのような調整作業を行えるのか、この際改めて検討し対策を講じておくことも必要ではないでしょうか。
流域自治体においては、活用しやすいハザードマップや現実的な避難計画の策定、それらを活用した防災訓練がどのくらいやれているのか、改めて確認しておく必要もあると思います。

ハードは大事、でもハードだけでは防げない。今こそ、ハード、ソフトいずれにも力点をおいた政策が求められています。
今回ヒアリングに同行くださった嘉田由紀子参議院議員が話されていた滋賀県流域治水の推進に関する条例についても、今後、深く学んで行きたいと思っています。

*1「緊急放流」:最高水位を超えないように、下流の堤防の高さ(整備状況)にかかわらず、流入と同じ水量を放流する操作

*2「予備放流」:平常時は利水のために貯めておく容量。豪雨時の洪水調整のために、水位を下げることをあらかじめ決めておく放流。城山ダムは、ダム操作規則で、「予備放流水位」は標高113mと定めている。(それ以上に水位を下げる「事前放流」は、放流ゲートの位置が高く構造上できない。)