「幼児教育・保育無償化」問題

何かと議論になる「幼児教育・保育無償化」の問題。1月23日、内閣府に設置された有識者会議で幼児教育・保育無償化の議論が始まりました。林文子横浜市長もこの会議のメンバー。

横浜市は、昨年11月に、「幼児教育・保育無無償化の制度設計に関する要望」を提出するなど、この問題について自治体の主張を明確にしてきました。市は「一時預かり、一時保育」の役割や、保育士の処遇改善、さらには認可外保育室がより適切な運営を確保できるような仕組みづくりにも言及しており、私は要望の内容について評価をしています。林市長が表明している「無償化自体は悪くない」という基本スタンスもそれで良いと思います。
自治体の取り組みとして注目されているのは、2017年4月から独自に幼児教育・保育の無償化施策をスタートさせている大阪府守口市の事例。無償化前後で、認定こども園・保育所等の入園状況を見てみると、未利用児童数(保留児童数)は110人から152人に増加しています。この152人が無償化の恩恵を受けられなかったということになります。
待機児童や保留児童が存在している中で3歳未満をも対象とする保育無償化は、不公平感を生むという意見もあるかもしれません。しかし、だからといって「完全無償化=3歳以上」というのも如何なものか。幼稚園の利用者は全て無償化の対象になるけれど、保育所では一部の利用者のみしか対象とならないというのもおさまりが悪い。子育て当事者や事業者を分断してしまうようなスキームになってはいないでしょうか。一体誰のための改革なのか?それが透けて見えるようです。
「幼児教育・保育無償化」を巡っては、保育の質のという面からも多くの問題提起がなされています。
「質」と「量」の面から子育てを社会全体で支えるという理念を掲げた子ども・子育て支援新制度に基づき、2013年には内閣府に子ども・子育て会議が設置されました。各自治体も子ども子育て会議を設置、5カ年計画を策定し様々な取組みを進めてきました。そこへ、政府の強い意向で降って湧いた「幼児教育・保育無償化」議論。子ども・子育て会議の委員が、「私たちの役割はなんなのでしょうか?」と問いたくなるのも致し方ないような状況です。究極的には「幼児教育・保育無償化」を目指すとしても、議論のプロセスがあまりに性急です。施策の優先順位を考えると、やはりもろ手をあげて賛成できません。
なかなか難しい無償化問題。「夏までに結論を出す」としている有識者会議も、いわゆる無償化対象の「線引き」にとどまらない議論をしてほしいものです。