特別養護老人ホームと地域包括ケア〜ラポールの取組みから〜

 社会福祉法人いきいき福祉会が運営する特別養護老人ホーム「ラポール三ツ沢」を見学させて頂き、専務理事の小川泰子さんのお話を伺いました。いきいき福祉会は、1984年に特別養護老人ホームラポール藤沢を開設して以来、グループホームやサポートハウスの運営や、訪問介護やデイサービスなどさまざまな事業を展開されています。

 ラポール三ツ沢では、ユニットケアによる個別ケアを実施されています。職員と生活支援を行うワーカーズ・コレクティブの協働によるケアワークで、「その人らしさ」を大切にすることをめざし、看取りケアも行われています。
 エントランスを入ると、バーカウンター、喫茶ラウンジが広がっています。各部屋にはトイレ、洗面台が配置されるなど、個人を尊重したケアと住まい方へのこだわりが現われた空間づくりがなされています。

 
 国は、特別養護老人ホームの整備にあたって、個室・ユニットケアを推進してきましたが、地域主権改革により、居室の定員について自治体が地域の実情に応じて自主的に定められることになりました。神奈川県の方針は、「原則ユニット型としつつ、多様 なニーズに対応するため、ユニット型と多床室との合築についても進める」というものです。基準の検討にあたって2014年度に県が行った調査でも、入所待機者は、「利用料が安いから」等の理由から多床室へのニーズ(35.6%)が個 室ニーズ(31.1%)を上回りました。また。市町村としても、多床室との合築を認めてほしいという意向(96.8%)が多数を占める状況です。今年8月からは、所得によって介護費の自己負担割合が1割から2割に引き上げられます。ラポール三ツ沢でもすでに退去の相談出始めているとのこと。
 
 地域包括ケアが推進され、住まいやケアのあり方が見直されつつあります。医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供することをめざす地域包括ケアの中でも、特別養護老人ホームの持っている力を生かし、ネットワークしていくことは大事な視点だと思います。いきいき福祉会は、藤沢市で唯一の定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業として24時間365日の訪問サービスにも取り組まれています。小川さんも、判断力、行動力が求められる現場で切れ目無く介護を提供してきた特別養護老人ホームならではの介護技術が生かせるはずと話されていました。
 
 2015年の介護保険制度の見直しは、2025年に向けた入り口であり、3年後には診療報酬と介護報酬の同時改定も予定されており、より一層大きな制度改訂も予想されます。
まずは、今後実施されるであろうこのたびの制度改定の影響調査を注視したいと思います。