「改正介護保険法」先送りされた課題と複雑化する制度

 6月15日、改正介護保険が参院本会議で成立しました。

 改正の柱の一つ地域包括ケアの推進に向け、訪問介護と訪問看護を組み合わせた「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、小規模多機能型居宅介護に訪問看護を組み合わせた「複合型サービス」も創設されるそうです。既存のサービスに加え、新たなセットサービスでますます複雑化しそうです。

 介護型の療養病床の廃止期限の廃止を6年延長することや、介護保険料上昇を抑えるために、2012年に限り財政安定化基金を取り崩せることも盛り込まれました。
 介護職員の待遇改善のための交付金2011年度までの時限措置ですが、今後については、交付金事業とするのか、報酬改定を行うのか、今年いっぱい、社会保障審議会・介護給付費分科会で議論されるとのこと。当初は、介護保険法の見直しにあたって、利用者負担の引き上げや公費負担の引き上げなども検討されていましたが、結局、これらの財源に関する議論も先送りされました。

 介護保険を見直すたびに制度が複雑化し使いづらくなる、使えなくなるということが続いているように思います。明らかな給付抑制により、第3期の介護保険事業計画(06年〜08年)においては、多くの地方自治体で介護保険財政の黒字化という現象も起きました。私は3年で集めた保険料は3年で使うということが基本だと考えます。

 昨日は、ヘルパーさんたちに、介護職員処遇改善交付金の効果についてお話を伺う機会がありました。護職員の平均15,160円の処遇改善効果が有ると言われている交付金ですが、女性たちの間では、いわゆる103万円、130万円の壁があり、処遇が改善されると、ワーク時間を抑制してしまうヘルパーも多いそう。また、介護保険サービスのヘルパーは4%、障害者自立支援法のヘルパーは15.5%、移動支援は0%と、サービス区分によって交付率が大きく異なっています。ヘルパーからは、この評価の違いも良く解らないとの声が聞かれました。

「小手先の改正」という批判がつきまとう介護保険の見直し。介護という仕事が、家庭内でアンペイドワークで行われていたことや、根強い性別役割分業意識が与える影響も大きいのではないでしょうか。出口の議論ではなく入口の議論、すなわち、税制や社会保障のあり方から根本的に議論されることが必要であると思います。