多様な人材を生かす

2004年12月の裁判所法の改正により、今年11月から、法律家の卵「司法修習生」が研修する際に支給されている給与が廃止され、生活資金を貸し付ける「貸与制」が導入されようとしています。
貸与にあたって、最高裁判所は、2人の保証人もしくは金融機関を保証人として立てなければならないとしていますが、最高裁判所が指定した金融機関はオリエントコーポレーションだそうです。
驚きました。過去には、利息制限法を超える金利で貸付けを行い、過払金の自主返還も進まない金融機関を保証人に指定するというのですから。

そもそも、司法試験に合格した司法修習生は、一年間の司法修習が義務付けられフルタイムで拘束される上、アルバイトは禁止されており「無給」状態です。日弁連の調査から現状でも、修習生はロースクール時代に平均して300万円台の借金があることが明らかにされており、貸与制の導入により更なる借金を抱えることも懸念されています。経済的なゆとりがなければ裁判官や検察官、弁護士になれないという時代がやってくることを危惧します。
裁判所法の改正の際に、国会でも、「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないように」との附帯決議がなされています。しかし、すでに、法科大学院適性試験の志願者数は、2003年と2009年を比較すると、大学入試センターでは4分の1に、法科大学院への社会人入学者の割合も、5割弱(2004年)から3割弱(2008年)へと減少しています。
限られた階層からのみ法律家が輩出される状況は好ましいとは思えません。志のある若者が経済的理由で断念することのないよう均等な機会を保障し、多様な階層の人材から法律家が生まれる環境整備にむけて裁判所法の再改正が必要です。
添付ファイル