競争と選択から生まれるもの

高校で養護教諭をされている布川先生から、子どもたちの保健室での訴えを入り口として、子どもの抱える悩みについてお話をうかがいました。布川先生によると、拒食症で命を落してしまう子やリストカットを繰り返す子どもは、ハイレベルな学校の子どもが多いと言います。「とことんやり抜いて」しまうのだそうです。痛みにより自己の存在を確認する。強い意志がありながら、自己決定の経験の無さがそうさせるのではないかというお話でした。多くの子どもは、教わる時間の長さや学力指向に自主性が負けてしまい、自分で考え自分で決めることが困難になっているし、氾濫する情報の波は、自己選択することを益々むずかしくさせているとの指摘もありました。また、食事を作れない子ども、十分な生活スキルを持たない子どもが、 生への不安を抱えてしまうこともあるそうです。さらに、子どもたちは、経済活動の対象にもなっています。
先生からは、「このような競争と選択から階層が生まれてしまう。階層間の争いのある社会や、同じ階層の子どもとしか会ったことのない子が作る社会でいいのか」という問題提起がありました。勝ち続けなければ生き続けられない社会では、苦しすぎる。先生の「学力の中身の検証方法を変えることが必要」という提言にも共感を覚えました。